希望ある明日に向かって歩むぞメッセージ

市川先生、
 卒業生のネットワークは希望を与えてくれるものです。どこにいても、どんな仕事をしていても、帰る場所がある、分かってくれる人たちがいる、と言うことはどんなに大切なことでしょうか?とても素晴らしいことです。是非、続けていきましょう。

 私の方は、コロナ関連の患者さんも減り、私の病棟はnon-COVID ICUになりました。私の働く病院にはまだCOVID専門ICUがありますが、全体的に患者さん数は格段に減ってきています。私の生活も穏やかな毎日になりました。
先生のボランティア情報紙へのメッセージ、読ませて頂きました。何度も何度もありがたく読みました。確かにそうです、今回のコロナに関しては自然災害などとは違って、目に見える被害が少ないのでどのように手を差し伸べて良いかわからない難しさがあります。しかし、経済的な被害、精神的な被害は広がっています。日本もアメリカのように中流階級が少なくなり、上流階級と貧困層の格差は広がると思います。契約社員や時給で仕事をしている人たちが真っ先に首を切らます。シングルマザーたちは子供たちを抱えてサバイブできるのでしょうか?地域での高齢者や障害を持つ方の生活はどうなるのでしょうか?アメリカも日本も不安の多い社会になることでしょう。その中で、どうしても忘れたくないのが地域内でのつながりです。お互いを思いやる気持ち、それをどうやって助長していくかは、ボランティア・コーディネーターやボランティアセンターの職員にかかっているかも知れません。もしかしたら、これが未来の日本を直接的に、または間接的に救うかも知れませんね。お互いを思いやりことはお互いを尊重し合うことです。

 ニューヨークでは「マスクをしよう!」と言うキャンペーンが始まっています。日本と違ってマスク着用が日常でないニューヨーカーにマスクを着けさせることは本当に大変なことなのですが、このキャンペーンで重点を置いているのは、「マスクをしろ」ではなく、「あなたを守るために私がマスクをする」と言うコンセプトです。そして、あなたを思いやるから私がマスクを率先してつける、と言うことが少しずつ浸透してきています。これを機に、お互いを思いやりるそんな社会が少しづず出来上がってくることを願っています。今日、夫とスーパーに行ったときに、マスクを着けていない女性がいました。夫がその女性に、なぜマスクを着用しないのか、と問いかけた時に、その女性はマスクなんて面倒でしたくない、と言いました。その時に、夫が「私がマスクをするのはあなたを守るためだ」と一言いいました。その瞬間、まわりにいた人たちが、そうだそうだ!と言ってその女性をマスクを差し出しました。私はそれを見て、この社会も捨てたものじゃないな、と嬉しくなりました。こんな小さいことですが、お互いを思いやる社会ができていることは私たちに希望を与えてくれます。

 最後に、私の個人的なことになりますが、嬉しいニュースです。ニューヨークのダウンタウンのウォール街近くにある、Pace University からTenure-Track Assistant Professor のジョブ・オファーを頂き、9月から看護学部の教員になることになりました。https://www.pace.edu/ 1万3千人程度の学生さんが学ぶ中規模の私立大学です。各セメスターに3つのクラスを教えることと、研究をすることが主になりますが、今のICUでの仕事も週に一度は続けることができるので、思い切って教員の道を選ぶことにしました。私は看護教育での修士と博士を終えて、いつかは未来の看護へ教育をとおして貢献したい、と思っていました。その夢が叶って嬉しいやら不安やらです。

 今後も、先生のお知恵を拝借することがあると思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、また、お便りします。              岩◎恵子

希望ある明日に向かって歩むぞメッセージ

岩◎さん、
こんにちは。日本時間午前11時半です。お休みの時間になりますね。遅く、すいません。

 さて、日本は、非常事態宣言が解除されました。でも、PCR検査の数が予定に達したとは聞いていないし、病院等での防護服等が足りない状況は変わっていないので、危機を脱したとは全然言えない状況です。これからも、感染者の増加とその抑え込みを繰り返しながら、生活していくことを覚悟しています。
 しかし、連鎖倒産、リストラ等によって失業者が増加し、貧困は広がることでしょう。何としても、生活が維持できる経済的支援、住まいの確保等々を行わなければなりません。また、サービスと地域の見守り等で支えていた高齢の方々や障害を持たれている方々及びその家族の方々への支援が滞ることは避けなければならない。ではどうしたら良いか、手探りで試行錯誤の連続ですが、私は考え続けています。

 まず、機会を頂き、全国会ボランティア・市民活動振興センターの『ボランティア情報』にボランティアコーディネーターとボランティアセンター職員への応援メッセージを書く機会を与えられました。その経緯と原稿は、「市川一宏研究室」に掲載しています。そこで、訪問活動の相手である一人暮らし高齢者の状態を心配しているボランティアが、居ても立ってもいられず、電話相談や運動機能の維持のための文書の配布、さまざまな方法での安否確認をしようとしている現状を知ることができました。その結果を今回の原稿に書いています。諦めないで、新たな絆を模索しているボランティアの方々の思いと働きに、私は励まされています。このような一つひとつの挑戦が、今必要とされています。

 また、先日、医師会、介護保険事業者連絡協議会、社会福祉法人、社協、行政(担当3部長、介護保険担当者)、市川が緊急に集まり、情報交換をいたしました。そこでは、①6月、7月に、民間事業者が経営危機を迎える危険性がある。4月、5月の介護保険事業の利用者が減っている場合、今後の給付はその分少なくなり、人件費を含めて財源が厳しくなる小規模の事業者も出てくる危険性がある。その結果、提供できるサービス推定量にも影響を与えること。②介護保険施設での感染者の発生した場合、感染した利用者への対応、感染していない利用者の保護、ケアにあたる職員の確保、感染防護服等の設備の準備をどのように図っていくのか。また感染の影響による事業の縮小、経営に及ぼす影響をどのように軽減するか、緊急の課題となっている。③家庭で感染者が出た場合、濃厚接触者への対応が問題になっている。たとえば、介護者が感染した場合の濃厚接触者である要介護者への対応、母子世帯の母親が感染した場合の子どもへの対応が急務であること。④虚弱高齢者等のフレイル対応が十分にできなくなった結果、要介護状態になる方が増えていくことが予想される。支援方法の開拓を含めて、支援を再建する必要があること、が話されました。問題点が明らかになったのですから、まずは私たちができることから始めていくことになると思います。

 私は、今、それぞれの場で、できることを模索し、行動していくことが大切だと思っています。このとてつもないコロナの影響に対して、新たな絆を、まずは、自分自身が生活する地域で取り戻していくことを大切にしたい。
 そして、私にあるもっとも大切な絆、それは卒業生とのネットワークです。私は、これからも大切にしていきたいと思っています。確かに、それぞれの働きの場や、今の生活拠点は異なります。しかし、それぞれが立ち戻ることのできる場、自分らしくいられる場、若き時を共有した者たちが集まる場を大切にしたいと思います。

 お金を失うと生活の危機です。まず社会的な対応は不可欠です。誇りを失うと心の危機です。相談支援や日頃の関わりの中で、人としての誇りが守られるようにさまざまな福祉援助、活動が必要です。最後に希望を失うと存在の危機と言われます。私は、岩間さんの、どのような困難に直面しても自分の仕事をし続けている姿に感銘を覚えました。また、コロナの影響を冷静に見る目に驚かされました。ニューヨークで起こっていること、対応から学ぶことはたくさんあり、私の役割を見直すきっかけになっています。そして、これからさまざまな困難に直面することが分かっている今、卒業生のネットワークは、それぞれに希望を生み出し、困難に取り組んでいく勇気を与えてくれることを願って、「希望ある明日に向かって歩むぞメッセージ」を続けていこうと考えています。
 

今の思いを書きました。それぞれの場で、頑張っていきましょう。岩◎さん、お元気で。
             2020年5月28日          市川一宏