2010年02月の投稿

最後の社会福祉大会

2010年2月6日、大利根町第23回社会福祉大会の講演をさせていただいた。昨年に引き続き、2年目であったが、本年は特別の意味がある大会でした。

当日、朝8時30分に三鷹駅から中央線で新宿に向かい、乗り換えて10時頃にJR湘南新宿ライン栗橋駅に着きました。当日は、晴天でしたが、赤城山より冷たく、強い風が吹きつけ、体だけでなく、心も凍えそうになりました。

大利根町のホームページには、以下のように説明されていました。「埼玉県北東部の首都50km圏内に位置し、北部は利根川をはさんで北川辺町と茨城県古河市、東部は栗橋町、西部および南部は加須市に接し、町の総面積は24.47km2で、東西に約6.2km、南北に約5.6kmの広がりをもっています。北部を利根川が流れ、関東平野のほぼ中央で、海抜13mの平坦な地形をしています。

産業の中心は農業で、こしひかり、いちごなどを生産する県内でも有数の穀倉地帯です。また、黒米を使った加工品をはじめとした特産品や農産物は、農業創生センターで販売され、町の観光拠点となっています。」

また、大利根町は、「童謡のふる里づくり宣言」をしました。大利根町は、「たなばたさま」「野菊」など数々の童謡を作曲し、またたくさんの校歌を作曲なさった下總皖一先生の生誕の地です。そのことを誇りに、「誰もが生き生きと、夢を持って生活できるような豊かな地域社会を創出していくためには、童謡の持つやさしさをまちづくりの基本とし、みんなで手を携えて、まちづくりを進めていくことが重要」として、以下のことを宣言しました。

  • 私たちは、下總皖一先生をふる里の誇りとし、いつまでもその素晴らしさを多くの人々に伝えます。
  • 私たちは、童謡の持つやさしさをまちづくりに生かし、みんなが夢を持てるようなまちをつくります。
  • 私たちは、童謡のふる里にふさわしい、人や自然にやさしい豊かなまちをつくります。
  • 私たちは、童謡を始めふる里の伝統・文化を生かし、活力ある新しいまちをつくります。
  • 私たちは、一人一人が主役であり、「全国に誇れる童謡のふる里おおとね」を目指し、みんなで努力します。

第23回社会福祉大会では、大利根町社会福祉協議会から「地域福祉は毛細血管のように~一人ひとりの暮らしを支えあう地域づくり~」というテーマをいただきました。実は、大利根町は2010年の3月に、近隣市町と合併し、加須市と名前を変えることになっています。大利根町という地名を使うことがなくなるのです。その事実の約1ヶ月前に、皆さんは、例年通り社会福祉大会を開催されたのです。

手のシワと手のシワを合わせて、「幸せ」を願う。そのシワは、まさに申し上げた文化と伝統であり、同士の絆、地域との繋がりであり、そこに生きた住民一人ひとりの人生だと思います。合併は、それぞれの市町村という手が、シワを合わせ、幸せを目指した取り組みであることを期待しています。そのことを町民の皆さんは、確認なさったのだと思っています。

私は、講演のまとめとして、以下の4点を申し上げました。

  1. 孤立等の地域の生活問題の早期発見・早期連絡(アンテナ)は、地域の福祉力。
  2. 共に支え合うまちづくり=理解や協力の基盤づくり
    そもそも、コミュニティとは?
    1. コミュニティに所属する者同士の相互の関わり
    2. 関わりに対するアイデンティティ、愛着
    3. それらを実現しやすい地理的な空間
    4. 互いを認め合うコンセンサスと一定の規範
    5. コミュニティを支える宗教や祭り等の文化の形成
    6. 人材や活動等、一定の地域資源の存在
  3. 血の通った活動は、生活の潤滑油
    地域密着型サービスの本来の意味
  4. 眠っている資源を掘り起こす(大利根町の底力)

    「人」 問題解決に取り組む当事者、医師、保健師、社会福祉士・ケアワーカー・ケアマネジメント等の専門職、住民、ボランティアといった保健医療福祉等に関わる広い人材 「もの」保健・医療・福祉・教育・公民館等の施設、空き家・空き店舗、サービス・活動、物品はもちろん、住民関係、地域関係、またボランティア協議会、医療保健福祉等の専門職ネットワーク等のネットワーク 「金」 補助金・委託金、寄付金、収益、研究補助金

    「とき」就業時間、ボランティアが活動する時間。課題を共有化し、合意して取り組むチャンス

    「知らせ」資源情報、サービス利用者情報、相談窓口における情報等のニーズ情報、計画策定に必要な統計等の管理情報

大利根の地名はなくなっても、その地域はなくなるものではないし、住民がいつものように生活しているという事実から出発するのが、地域福祉の本来の姿なのです。

栗橋の駅をおり、再び会場に着き、皆様方の顔を見て、私はある歌を思い出しました。いずみたく作曲の歌です。

「ぼくらは みんな 生きている
生きているから 歌うんだ
ぼくらは みんな 生きている
生きているから 悲しいんだ
手のひらを太陽に 透かして見れば
真っ赤に流れる ぼくの血潮 ・・・・・」

それぞれの手を、明日という太陽に向け、流れる血潮という、文化と伝統、同士の絆、地域との繋がり、住民一人ひとりの人生、一人ひとりの顔を確かめていくことは、合併の趣旨に反するのではなく、まさに合併による幸せを実現するのです。豊かな自然の実り、温かい人と人の絆がいつまでの守られ、大利根町が目指した明日が、実現できますことを心より願っています。