希望ある明日に向かって歩むぞメッセージ

【新型コロナは、新しい自分を切り開く】

  東京国際大学の松本すみ子と申します。   博士の学位を、2011年にルーテル学院大学で取得しました。博士論文は、「住民の福祉活動参加と主体形成プロセスに関する研究-精神保健福祉ボランティアに焦点化した質的分析-」というテーマです。

  精神疾患や精神障害など、メンタルヘルス課題に直面している方々の地域での生活をより質を高めていくためには、 行政や専門職はもとより、地域住民の果たす役割がとても大きく重要であることに言及してみました。指導教授は、市川一宏先生。研究に向けて右往左往する私を常に優しく見守り、そしてたいへん丁寧に指導してくださいました。市川先生には、ただただ感謝の一言に尽きます。

 私は元々は精神科病院のソーシャルワーカーでしたが、21年前に現職に就き、社会福祉士・精神保健福祉士の養成教育に取り組んでいます。一方、他学部に所属する、将来、ソーシャルワーカーになるわけではなく企業などへ就職していく学生たちに、講義を通して福祉のこと、そして福祉のこころを伝えていくことにも、たいへん     大きな意義を感じながら、日々の教育に取り組んでいます。    

 専門職はもとより、多くの市民が福祉についての理解と、困難な状況に直面する人たちへの理解や思いやりを     もつことがとても大切だと思っていることが、授業への強いモチベーションになっています。

 さて、新型コロナウイルスの感染拡大は、日本だけでなく世界中の人々を脅かしています。     私たちは、生活を変えることを余儀なくされました。     健康を害し、命の危険にもさらされ、仕事を失い、今までの生活を維持することが困難な     人たちがたくさん苦しんでいます。   

 私の勤務する大学は、急遽3月に春学期の授業を全てオンラインに切り替える決定をしました。     何よりも、学生の安全・健康・命を守ることを最優先と考え、全国の大学でも早い段階でオンライン     での実施を決定し準備をスタートしました。     しかし、教育は言うまでもなく一方向ではなく、学生と教員の協働により成りたつものです。果たしてオンラインで大丈夫なのか? 大半の教員の思いでした。また、講義はともかく、スポーツ実技や実験などはオンラインにはなじみにくく、体験しないとどうしても教えられないことや、習得できない技術があります。担当の先生がたの戸惑いは、たいへん大きかったです。

  大学の全ての教員が、4月16日からの春学期スタートに向けて、3月からオンラインでの授業の     練習をしました。     全学で、学部で、そして小さなグループを作って、何度も何度も何度も、練習を繰り返しました。     その過程の中で、 ・やっぱり、無理。授業は対面でないとできない     ・オンラインで実施する授業の方法を何とか習得しよう     ・確かに無理なところは多々あるけれど、対面ではできない何かがあるかもしれない。それを探してみよう。

 いろいろな考え方と、行動が先生がたの中に生まれました 。そして春学期が終了した今、決して対面には及ばないものの、オンラインだからこそ可能な教育方法を駆使して素晴らしい授業が先生がたによって実施されました。とりわけ、スポ―ツ実技の授業で、すばらしいオンラインでの授業が誕生し、学生たちは     その授業を通してたくさんの知識と技術の習得をしました。

 「無理だと言っていたら、なんでも無理になってしまう!」   今回のことから、直面していることはみんな同じでも、そのとらえ方や処し方は、人それぞれだと 改めて痛感しました。「与えられた条件はみんな同じ。でも、その中で自分にできる最大限の努力をし、最高の仕事をする」 プロとはそういうことなのだと改めて学び、自分もそうありたいと強く願っています。    

 きわめて厳しい状況になり、与えられた選択の幅が狭かろうと、他者への思いやり、そして自分の果たすべき役割に真摯に向かいあっていくこと。そして、日々、前に進んでいく自分でありたいと、そう強く思っている今日この頃です。
              東京国際大学 副学長 人間社会学部長    松本すみ子