陶磁器のわがまま展覧会-4

綾町探検(2003年3月末)

 宮崎空港の1階にあるホールで、宮崎県内の新進気鋭の作者による陶器市が開催されていた。出発時刻が迫っている時、市の開始時間前だったので、私は外から見ていた。準備のため、店鋪では陶器を並べていた。私は、お願いして展示の準備中の店鋪を見ながら、気に入った作者から名刺をもらった。その一つに、綾町の八衛門窯があった。
 再会の機会は、1年後に訪れた。夜には、翌日の打ち合わせがあったが、12時前に宮崎空港に到着し、近くでレンタカーを借り、綾町に行くことにした。たまたま出会った陶器を求めて、夢は広がる。
 宮崎市内を通過して、約1時間ぐらいであろうか。綾町の中心部についた。町役場の隣の綾手作りほんものセンターの前に、「工房ひむか色」と書かれた看板が見えたので、入ってみると、沢山の陶器や生地が並べられていた。それぞれが、なかなか個性的なもの。思わず足をとめる。そして、陶器のお話を聞くと、何軒も窯元があるとのこと。地図をもらい、できるだけまわってみることにした。そして後で気がついたことだが、丁寧に教えてくださった女性が、最後に立ち寄った「大原陶苑」の奥さんであった。
 綾セレクションという焼酎、針葉樹林、花時計等で有名であり、宮崎県でも元気な市町村の一つである綾町では、窯元、木工、織物店がたくさんあり、一つの地域文化をつくっていたことを、私はまったく知らなかった。私の窯元めぐり旅は、「八衛門窯」→「綾川陶苑」→「元町陶苑」→「陶房八十一」→「大原陶苑」へと続く。

工房ひむか色
工房ひむか色 内部

「八衛門窯」は、役場からほど近くの一軒家である。清楚なたたずまいの家は作品の展示場になっており、離れに窯があった。作品は、青くうつくしい空をイメージさせる色が特徴である。「日常の生活を楽しく演出してくれる器づくり」を目指す泰田氏の主張が、店内いっぱいに輝いていた。豊かな土を彷佛させる茶系統の器、口元が広がる癒しのコーヒーカップ等々、展示室に楽しい世界が広がる。私は、気に入った陶器を2つ買い求めた。一つは高さ約20cmの花瓶。もう一つは、約15cmのカップ。いずれも美しい色彩が、使う人の心に夢を与える。

八衛門窯
泰田氏

 次に川沿いの「綾川陶苑」に行った。一番古い窯元である。ペンション風の建物が見えた。階段を登り、展示室の前に行くと、「御自由にお入りください」との看板が見える。店主はいないが、陶器が客を待ち構えるように並べられている。しばらく作品を手にとりながら、時間を忘れるような一時。いろいろな作品の中で、平凡かもしれないが、とても温かみを感じる茶わんが私の心を放さない。作品には相性がある。気に入ったので、店主を探すが、どうやら奥に窯があるようなので、近くに行き、器に彩色をつける作業をしている店主がいた。陶器のいずれにも名前が書かれていないので、その理由をお聞きすると、「手間がかかるから」との返事。「陶工の生涯は、土と焔との対話にあけくれる・・・しかしものをいわぬ相手だけに気苦労も多い」という作風を形づくる人柄を感じた。

 次に川をわたり、「元町窯」に行く。「『手造り・手描き』という器本来の姿を見詰め直し、伝統の心と技に現代の感性を取り入れた器の創作に日夜研鑽している」という窯元。部屋は確かにもてなしの心に満ちている。玄関に薪を置き、「元町窯」の大きな看板。明らかに、存在感がある。しかし、一歩中に入ると、畳の部屋に作品が並べられ、とても優しい雰囲気がある。そしてお茶を出していただき、いろいろ作品の説明をしていただいた。新作を教えていただこうと、綾に来てはじめて名刺を渡すこととなったが、それが意外な展開に。日本福音ルーテル宮崎教会で宣教師をなさっておられた方の娘さんが店主の日高さんの御夫人とのこと。私の大学の恩人であり、かつ関係の深い方である。突然に大学と教会の歴史がよみがえる。買い求めたものは、木の幹の味わい茶わん。宮崎という温暖な県で、寒い冬に暖を与えられる木の器を手に入れることができた。その陶器には、かじかんだ心をとかす、温もりが込められているような気がした。

 「陶房八十一」を探し、たどり着いたところにきれいな花が咲いていた。そして坂を登ると窯元があった。確かに展示室は決して大きくないが、はっきりとした黒の器、絹ような温かみのある白い器、そして淡い肌色のような器と、ポリシーが徹底している。焼き物のことをお聞きする陶元が説明するやさしい言葉とは別な、陶器の強い個性を感じた。私は、白の陶器を買い求めなかったことを、今としては後悔しているが、その時には強い黒の茶わんと、その個性を中和する淡い色の茶わんを所望した。「普段の生活に潤いを与える、そんな器造りを心がけています」とする興梠氏の意図が良く分かる。

 「大原陶苑」にたどり着くには、なかなかの努力を必要とした。そして、その作品に出会ったのは、最初に立ち寄った「工房ひむか色」であった。そして、熱心に綾の窯元の説明をしてくださった女性が、「大原陶苑」の窯元の夫人であったこと。作者のポリシーは湯のみ茶わんを見ていただければ一目瞭然。照れながら説明くださる窯元の作品のイメージには、発想を大切にしようとする姿が伺える。そしてその発想の原点を、私は自然の美しさと変化、そして厳しさと感じた。生活の拠点である自宅に、いろいろな作品が並べられていた。何か、プライバシーに踏み込んでしまった気がして、申しわけなくも思ったが、自分の作品を見ながら、家族と食事をするなんて、なんて贅沢だろうかとも思う。宮崎市までの道順を教えていただき、充実した探検を終えることができた。「時間とはつくるもの!!」

綾町の様子は旅日記にものせています。