長野県社会福祉協議会『地域福祉研究会報告・提言』

長野県社会福祉協議会から委嘱を受け、長野県内における地域福祉コーディネーターの現状と今後のあり方について実証的研究を行ってきました。2015年11月、『報告・提言』としてまとまりましたので、お示しします。ご参考にして頂ければ幸いです。
一緒にまとめて下さった各委員、そして協力して下さった長野県内の市町村、市町村社協の方々にお礼を申し上げます。

研究会設置要綱

地域福祉研究会報告書

はじめに

長野県は、全国の都道府県の中でも、地域実践の伝統がある県である。全国に大きな影響を与えた地域医療の取り組みや、昭和20年代に全市町村に設置され、社会教育に関わる諸活動や青年団、婦人会等の団体の活動拠点として大きな貢献をしてきた公民館での活動等は、今日にも引き継がれている。

また、地域福祉に関しても、市町村社会福祉協議会(以下、社協という)の地域の特性に応じた特徴ある社協活動等の実践、社会福祉法人による地域貢献、さらに市町村行政を中心とした地域ケアの取り組みが、今日の地域福祉の基盤となっていることは事実である。

この20数年、長野県内のボランティアコーディネータ−研修やふれあいいきいきサロンのモデル事業、市町村地域福祉計画の策定、民生委員・児童委員研修、介護支援専門員研修、福祉大会等への関わりを通して、長野県内の地域福祉の底力を学ぶことができた。

今、日本は大きな課題に直面している。拡大する経済的貧困の連鎖、顕在化する孤立と孤独死、そして虐待や自殺という深刻な社会的問題、少子高齢化に伴う地域の存在の危機等、待ったなしの状況がある。それらに対応すべく、①地域社会全体で虐待等から子どもを守り、貧困の世代間連鎖を断ち切る社会的養護、②経済的に困窮し、最低限度の生活ができなくなるおそれのある人に支援を行い、地域の再構築を目指した生活困窮者自立支援、③高齢者の社会参加・支え合い体制づくりの推進等を内容とする介護保険等が進められている。その原点は、各地域レベルで、具体的問題にどのように取り組み、地域づくりを行うかということ。当事者、住民、民生委員・児童委員、ボランティア、NPO法人、診療所や病院等の医療機関、社会福祉法人、社協、行政等の機関や、社会福祉士や介護支援専門員、医師等の専門職が協働して、さまざまなバリアフリーを取り除き、「支える、支えられる」という一方的な関係ではなく、「相互に支え合う」共生の地域づくりを目指した取り組みが不可欠になっている。

本報告書は、これらの取り組みの中心的役割を担う地域福祉のコーディネートを行う人材の現状を調査し、果たしている役割を明らかにするとともに、今後の実践をより強化するための提案をしている。

この報告・提案が、長野県内における地域福祉の向上とともに、全国の地域福祉コーディネーターの日頃の業務の向上と、配置の拡充に寄与できれば幸いである。

最後に、本報告の審議に加わり、事例提供と評価に関わって下さった委員の方々、6年にわたる地域福祉コーディネーターの養成を資金的に支えて下さった長野県市長会、長野県町村会に心より感謝したい。

長野県社会福祉協議会地域福祉研究会委員長 市川一宏

研究会委員名簿