私の思い
卒業生、そしてルーテル学院大学・大学院関係者の皆様へ
ルーテル学院大学
名誉教授 市川一宏
ルーテル学院大学は、2024年3月25日、2024年度の学生募集を停止する旨の文書をホームページに掲載しました。その知らせを聞いた今の自分の率直な気持を書かせて頂き、卒業生はもちろん、教会、後援会、関係学校、関係福祉法人、授業を聴講されていた方々、応援して下さった方々、すなわち関係者の方々にお送りさせて頂きます。
ふりかえって、2020年のコロナ感染症の拡大によって、個々の学生に出会い、それぞれの成長を目指した教育を行ってきた本学は、遠隔授業に変更することを余儀なくされました。教育環境は劇的に変化し、それに適応すべく石居学長をはじめとする執行部、関係教職員は環境整備に全力を尽くして下さいました。それに応じて、教職員が協力して学生への授業等の支援を続けていくことができたのは、奇跡と言っても過言ではないと思っています。
その後も、授業の工夫、本学の特徴である個別支援、受験生の開拓等と、石居学長を中心にした執行部、教職員、関係者の働きに対して、私は感謝し、かつ敬意を表したいと思います。そして、今の在学生一人ひとりが希望をもって学び、育っていくことができるために、精一杯バックアップをさせて頂きます。
ただ、私は2002年より12年間、そして再任され2018年より2年間、合計14年間学長を勤め、経営責任を担ってきましたが、強固な経営基盤の大学を石居先生にお委ねできなかったことを、本当に申し訳なく思っています。深くお詫びいたします。
さらに、長くルーテル学院大学の基盤を支えて下さった卒業生の皆さん、絶えずルーテル学院を支え導いて下さった後援会の方々、教会の方々、またいつもバックアップして下さった方々に、改めて心からお礼を申し上げます。おかげさまで、優れた教職職員の真摯な努力によって築かれた教育実績は、各分野で活躍して卒業生等が証明して下さっています。
なお、学生募集は停止しますが、ルーテル学院大学はこれからも歩みを止めていません。現在の在学生の学びと成長の機会を提供していきます。どうぞ、在学生のために、また今後も指導していく教職員のために、お祈り下さい。
また、今まで本学に40年間勤め、定年後も名誉教授として関わらせて頂いているルーテル学院大学、大学院、神学校において、たくさんの学生と出会い、一緒に悩み、明日の社会を描いてきた経験は、思い出として私の心に留まり、また卒業生同士の関係も、長く続いています。ルーテル学院は、私にとって、人生の原点であり、まったく異なる背景にある者たちが集い、交わる心のホームであり、定年退職した後も、立ち戻るふるさとでもあります。
今、福祉系の大学等教育機関に入学する学生が減少しています。そして社会福祉機関・団体が求人を出しても応募者が少ない傾向がみられます。しかし、支援を必要とする人々は確実に増加しています。この閉塞感を打開するために、生活課題に一緒に取り組み、学び、互いに励まし合いながら解決してきた卒業生、仲間と協働して、未曾有の危機に挑戦していきたいという気持はまったく揺らぎません。皆さんも、それぞれの場で、また今までと同じように日々の生活を通して、ルーテルで学んだことを大切に、ルーテルのミッションを受け継いで頂きたいです。
私は、これからも、ルーテル学院大学の名前を背負って、神様がお認めになる限り、踏ん張ってみたいと思います。
大学の美しい中庭には、礼拝堂に向けて立てられたモニュメントがあり、そこには、私が困難に直面した時に、たえず立ち戻っていたルターの言葉、「自分のためでなく 隣人のために生きて仕える生に神の祝福があるように」と書かれています。そのミッションを掲げ、一緒に困難にある方々に希望を届けてまいりませんか。