天畠大介さんが、社会福祉学会奨励賞(単著部門)を受賞!

ルーテル学院大学の卒業生の天畠さんは、『しゃべれない生き方とは何か』(生活書院)を執筆し、2023年の学会賞を受賞した。講評に関しては、学会のホームページをご覧頂きたい。

1981年に広島に生まれ、15歳の時、医療過誤により、四肢麻痺、発話障がい、嚥下障がい等、多くの障がいを抱え、2000年に千葉市袖ケ浦養護学校高等部を卒業後、様々な困難に直面しつつ、大学で学ぶ希望を捨てず、ルーテル学院大学総合人間学部に入学し、2008年、大学を卒業した。その後、立命館大学大学院先端総合学術研究科に進み、一貫性博士課程を修了した。現在、参議院議員。

私は、彼が本大学の学生であった時、多くの学生が学内で彼の支援を行い、一緒に育っていったことを覚えている。私にとっても、本当に身近な学生で、彼の前では自分も素直になって、接することができた。魅力的な人柄である。

また、天畠さんの受賞者として挨拶が代読されたが、その挨拶を聞いて、私は、彼の成長を誇りに思うとともに、育てて下さった立岩先生に心より感謝した。以下、代読された文章と彼が補足した言葉をご紹介する。

「あかさたな:立岩先生に感謝しています。(代読)代読します。この論文の執筆にあたって、お礼をお伝えしたい方は数え切れないほどいますが、今日この場を借りて恩師立岩真也先生に改めて感謝を伝えたいです。手も足も口も、自由に動かすことの出来ない私が、「ライフワークとしてできるのは研究しかない!」と思い立ったとき、大学院の門戸を開いてくれたのは立命館大学の立岩先生でした。前例がないほどの重度障がいの私に「ついに来たか」と声を掛けてくれました。研究に挑戦するチャンスを与えてくれた先生がいなければ今日、私はここにいません。信じられないことに、立岩先生は今年7月に急逝されました。奨励賞受賞の知らせを受けたのはその翌日のことでした。棺の中の先生に報告できたことは、深い悲しみの中で少し心の救いとなりました。

さて、この「しゃべれない生き方とは何か」は私の博士論文をもとに執筆しております。この論文執筆は私にとって「当事者性」を獲得していく過程そのものでした。私はそれまで、14歳で中途障がいになってから、自分の障がいを心から受け入れられたことはありませんでした。自分ではできないから人に助けてもらわないと生きていない、弱い存在。それが重度身体障がい者である自分だと捉えていました。

研究を続けていく中で、その考えが徐々に変わっていきました。

私は発話困難な重度身体障がいを持つ当事者の一人であり、この社会を生きていく上で生じる困難を、私が言語化して社会に発信していくんだ。

自分が先行研究から様々な気づきを得たように、私の研究が他の誰かの生きやすさのヒントになっていくかもしれない。

自分は自分の困難、障がいについて社会に声を届けることが出来る存在なんだ。

発信をすることで、たとえどんなに小さくても社会に影響を与えることができるんだ。

そう感じるようになったとき、無力な存在だと思っていた重度障がい者の自分の捉え方が変わっていきました。

あかさたな:当事者研究は自分に貼られたラベルを貼りなおすものです。<本人の言葉>

今も声をあげることができない、社会で生きづらさを抱える人はたくさんいます。その方たちに少しでも影響を与えられるような研究、活動を今後も続けていきたいと思っています。

本日はどうもありがとうございました。


 言いかえると、論文執筆の過程は自分に誇りを取り戻す作業であったとも言えます。<本人の言葉>

授賞式の後、私は控え室に彼を訪ねた。懐かしい彼に会って、共に笑い合い、私は約20年前の日々に一気に戻った。そして、彼が結婚し、自立したことを知った。(伴侶の方は、彼の右におられます。おめでとうございます。)また、今も天畠さんの通訳を続けている卒業生(左)の元気な姿に出会うことができた。私にとって、本当に幸せな時であった。