希望ある明日に向かって歩むぞメッセージ

 現在、私はがん専門病院の緩和ケアチームに属し、未成年の子どもを育てる若年がん患者とそのご家族の支援に携わっております。この支援の目的は、「病気の患者」という側面からだけでとらえず、「その人らしさ」を大切に、その人と家族の社会生活を含めて支えることですが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、支援もこれまでどおりとはいかなくなりました。入院患者さんへの面会は制限されています。患者さんは感染症からの安全は守られるかもしれませんが、ご家族やご友人など親しい方と、身を寄せ、触れながら安らぐ関係性が得られにくくなりました。同じく看護や支援のあり方も変化せざるを得ません。

 そういったなか、日常の中で“いたみ”に気づくことが増しています。患者さんやそのご家族のみならず、力を尽くす医療関係者も、これまでの「当たり前」を失い、それぞれにいたみを抱えています。誰でも、疲れた身体と揺らぐ気持ちから、理解し合うことが難しくなること、思いやる行動に気づきにくくなることがあります。それぞれがいたみを抱えるこの現状に、未来が臨めず闇が深まる感覚をおぼえることがあります。

 ですが、「希望ある明日に向かって歩むぞメッセージ」を読ませていただくと、現在が未来と断絶されているのではないということが感じられます。皆さまのお姿は、それぞれの地において現在の一断面にあって、なしうる工夫を重ねながら、支え手として、誰かを伴走しつつ、いたみを分かち合うバトンを、明日のために引き継いでおられるように思えます。先行きの見えない現状にあって、そのことは、一筋の光のように、私には感じられます。

 市川先生にお招きいただき、このような先生方、岩◎様をはじめ卒業生の方々の交わりに加えていただき、ありがとうございます。

 どうぞ、それぞれの場で、安全と安心が守られますように。

                 2020年9月8日 小嶋(左近)リベカ

2020年9月19日 朝日新聞「be report]