希望ある明日に向かって歩むぞメッセージ

 4月のことでした。教え子の一人からメールがありました。その内容は、「同級生M君と奥さん、そしてお母さんが新型コロナウイルスに感染で闘病中。激励のメッセージを」という衝撃的なものでした。

 励ましのメールにしばらくしてM君から返事がありました。そのメールでM君は、闘病生活の苦しさ。進行に伴い意識も朦朧となりさらに呼吸困難に陥り人工呼吸器も装着し死も覚悟したこと。今は皆の励ましを支えに快方に向かっていること等を伝えてくれました。幸いにもその後、本人、奥さんさらにお母さんも回復できました。

 彼は飲食店を家族で経営したこともあり、新型コロナウイルス感染拡大の関係で経営も苦しい状況に追い打ちをかける感染でした。精神的にも肉体的にも本当に苦しい状況だったようです。でもメールでは思いがけないことも伝えてくれました。私が「いつも祈っています」と付け加えていたことに対し、「お伝えしていなかったのですが、実は私はルーテル神水教会で洗礼を受けたのです」と。そして闘病中の苦しみの中で、神さまに何回も祈ったことも伝えてくれました。本当に驚きましたし、神さまに感謝しました。

 その後しばらくして地元の新聞に彼の記事が出ました。「感染者は語る~コロナとの闘い」というその記事で、彼は自分や家族の45日間にわたる闘病生活についてすべてを語っていました。もちろん闘病の大変さ。家族の苦しみと支え。特に献身的に支えてもらった医療関係者の方々の働きとそのことへの感謝。また保健所の感染拡大を防ぎたいとの求めに応じ、家族で相談し店名を公表。そのことに対するいわれのない差別と多くの人からの激励。そして店名公表の記事を見たある中学教諭の求めに応じ、死を覚悟するほど重症化し、差別の現実を突きつけられた自分の話を動画でその中学の生徒たちに伝えたのです。こうしたことについての理由を次のように語っています。

 「私が店名を公表したのは、この感染症の恐ろしさを伝えると同時に、患者や医療関係者などへのいわれのない差別を減らしたかった。特に入院中、看護師がふと『自分がどこで働いているかは外では言わない』と涙をみせたことがショックでした。でもこうして回復できた陰に『病院の威信をかけても治す』と献身的に治療に当たってくれた医師や看護師さんたちの存在があること。だからこそその方々への感謝も伝えたい」と。

 実は、ニューヨークで献身的な働きをされているルーテル学院大学の卒業生の方の記事を読みながら、身近かにいるM君とその家族を支えた医療関係者の方々のことを重ね合わせていました。

 故徳永徹福岡女学院元院長の座右の銘で、「凛として 花一輪」という言葉があります。徳永先生によると、この「花」は野山に咲く「野の花」だそうです。だからこの言葉は「野の花一輪、心ない人には踏みつけられるが、心ある人には喜ばれる。そういう毅然とした人でありたい」という意味なのです。さらに徳永先生はこうも書いておられます。「花は、人に見られるために咲くのではありません。花にもし使命があるとすれば、それは自分らしく咲くことなのです」と。

 それぞれの場所で「地の塩」として働いておられるルーテル学院大学の卒業生の皆さん、そしてそこを目指した学びを続けている学生の皆さん。それぞれの働きを神さまが見守り支えて頂いていることを、希望を持って受け取り、一歩一歩歩いていかれるようお祈りします。

                                内村公春

(現九州ルーテル学院院長・ルーテル学院中高等学校校長、前九州学院校長)