ルーテル学院大学 チャペルアワーメッセージ 「私たちのよりどころ」    聖書:詩編23編

  4月2日午前8時、同期を介して、ニューヨークの病院で看護師として働いている卒業生の岩◎さんよりラインが届きました。私の卒業式のメッセージや卒業生への呼び掛け文を読んで、涙したこと、心が癒やされたこと、そして新型コロナの感染が爆発的に広がっているニューヨークにおける医療現場の厳しさが書かれていました。

 私は、早速、今でも繋がっている卒業生に対して、以下のメール・ラインを送りました。  <岩◎さんへの応援メッセージの依頼>「こんにちは。さて、1992年度卒業の岩◎さんから、ラインが届きました。励ましのメッセージを送ろうと思います。

 「私は今、マンハッタンのMount Sinai Hospital と言う大きなhealthcare system の中の一つのHospital のCOVID ICUで働いています。3日前ですでにMountSinai System の全部の病院での死者が187人に上り、今日の時点では死者の数がもっと増えていると思います。霊安室も一杯でご遺体を置く場所もありません。ICUベッドもICUナースも足りないし、人工呼吸器も足りません。私の働くICUでは<省略>まさに、戦場下です。数週間前までは普通に生活をしていたのに、人間の生活ってこんなにまで急に変わってしまうのですね。自分の身を守るためのマスクやガウン、フェイスシールドなども不足して、自分の身も守れません。こんなに時ですが、いつも私が神様に願っていたこと「神様のために私を用いて下さい」と言うことが、もしかしたらこれなのかも知れません。・・・・・。」 励ましの気持ちを伝えたい卒業生は、私個人に100字以内のメッセージを送って下さい。今週末には、まとめて送りたいと思います。」  そのメール・ラインを受けて、私にたくさんの卒業生、教職員からの励ましのメール・ラインが届きました。4日の午後、まず第一陣として、それらをまとめて岩◎さんに送りました。私たちの思いを込めて。

  早速5日に、岩◎さんからメールが届きました。「ルーテルの皆さんからのメッセージを一つひとつ大切に読ませて頂きました。涙が止まりません。皆さん、本当にありがとうございました。そして、多くの方の祈りに支えられて私の毎日があるのだと思いました。皆さんの祈りを大切にこれからも頑張っていきます。どうぞ、これからも私たちのために祈ってください。」

 これらの応答から始まり、今は、卒業生、ルーテル学院の教員、関係者と一緒に「希望ある明日に向かって歩むぞメーセージ」を集め、『市川一宏研究室』に掲載しています。  

 新型コロナウイルスの世界的な拡散と混乱は、経験していない未知の世界です。将来がまったく見通せない。家での学生へ遠隔授業を行い、送られてくる一人ひとりのコメントを読んだり、メールで応えたり、ZOOMでゼミを行ったりという、今までとまったく異なる生活を強いられています。数年後に迎える定年のようです。

 他方、私には、貧困、失業で住まいを失い、生活に行き詰まっている多くの方々の悲鳴が届きます。また、地域では、高齢者や障害をもつ方の孤立の問題が広がり、また介護者や親がコロナに感染した場合の濃厚接触者である要介護者や子どもへの対応も緊急の課題になっています。 コロナウイルスの広がりは、今までの関係を打ち砕き、不安、恐怖、不信、怒りを生み出し、負の連鎖が広がってきていると実感しています。だからこそ、私は、大切なもの、大切なことを守る決意が必要だと思います。私、そのなかに「人への思いやり」を加えたいと思います。

 そのアクションの一つが、「希望ある明日に向かって歩むぞメーセージ」です。そこには、ルーテルの関係者が、援助を必要とする方々と共に生きる姿と日々の思いがメッセージとして綴られています。 このことを可能にした背景は何でしょうか。ルーテル学院という場における、友人との出会い、教職員との出会い、様々な学内外の活動との出会い、そして神様との出会いだったと思います。そこから、絆が生まれ、育ち、卒業してからも広がっていると、私は実感しています。  そして、私は、教員としての37年間の経験を通して、詩編23編の聖句にたどり着きました。皆さんと一緒に、読み、私のメッセージを終えたいと思います。

  主は羊飼い、  わたしには何も欠けることがない。   主はわたしを青草の原に休ませ    憩いの水のほとりに伴い 魂を生き返らせてくださる。   主は御名にふさわしく    わたしを正しい道に導かれる。   死の陰の谷を行くときも    わたしは災いを恐れない。    あなたがわたしと共にいてくださる。    あなたの鞭、   あなたの杖    それがわたしを力づける。    わたしを苦しめる者を前にしても    あなたはわたしに食卓を整えてくださる。    わたしの頭に香油を注ぎ    わたしの杯を溢れさせてくださる。    命のある限り    恵みと慈しみはいつもわたしを追う。    主の家にわたしは帰り   生涯、そこにとどまるであろう。                           詩編 23編