希望ある明日に向かって歩むぞメッセージ
ルーテル学院大学卒業生の皆様へ 2020年5月
新型コロナウイルス(COVID-19)が世界中に猛威をふるっていますが、皆様はお元気でお過ごしですか。
新型コロナウイルス感染症対策の為に、日本で、あるいは世界中のどこかの国や地域で、それぞれの職業、家族での役割や地域での役割の中で、直面している多様な困難の中で、一生懸命に生きている皆様に敬意を表し、共感し、心からお見舞い申し上げます。
私は、御蔭様でリモートワーク中心の日々で、外出を抑制しながら家族と一緒に元気に過ごしています。
さて、「時間」は前にしか進みません。私たちが生きる世界では、「平面的」には前にも後ろにも体を動かすができますし、「立体的」には上に登ることも下に降りることもできます。けれども、「時間」については、私たちは、「現在」から「未来」に向かって生きていて、決して、「過去」に戻ることや「時間」を行ったり来たりすることはできません。交通機関が充実し、一定のバリアフリー化が進んでいる今、平面的にも立体的にも移動することができる私たちですが、タイムマシンはないので「時間」を自由に移動することはできないのです。
それにもかかわらず、新型コロナウイルス感染防止対策の緊急事態宣言下では、国や自治体が私たちに勧めて要請しているのは、人と人との間の「社会的距離」を保つことです。交通機関の発展によって国内外に広範囲に移動可能なグローバル化が進んできているにも関わらず、現在は世界中の多くの人々は、お互いの命を守り合うために、国境、都道府県境、市町村の境を越えて移動したり、人と会ったりすることを極力抑制する日々を過ごしています。
そのような状況下、ルーテル学院大学の卒業生の多くは、学生時代の専攻に関連する保健・医療・福祉・臨床心理・教会等の分野をはじめとして、感染症対策や日常生活維持のための最前線で働いている方が多いと思います。
そこで、日々の取組は前例のない厳しさの中にあると拝察しますが、厳しい状況の今だからこそ、これまでとは異なる経験の中に、皆様が生きがいや働く意義を見出していることを願っています。
先ほど申しましたように、「平面」や「立体」を移動できる私たち人間は、「時間」を「過去」や「遠い未来」へとは移動することはできません。けれども、私たちが生きた「過去」は、私たち自身の「現在」と「未来」に、少なからず影響を与えています。「未来」は予測することしかできませんが、「過去」は私たちの心身に、「経験」「学習」「考察」「記憶」などとして刻まれています。
卒業生の皆様に影響を与える「過去」の一つが、ルーテル学院大学在学中の「学び」と、現在につながる「学友や教員との交流」であるのではないかと、私は信じています。
皆様の心に残り、響き、これまでと今を支えている重要な要素が、大学時代の学びと交流ではないかと思っています。
私が教員を務めていた当時は「文学部」の単科大学で、社会福祉(カウンセリングを含む)と神学の学科に分かれていました。いずれの学科でも専門の学びと実習の基礎に「コミュニケーションの理論」があるとの考えに基づいて、1年時の「必修」科目に位置付けられていた「コミュニケーションの理論と実際」の授業を、私は担当していました。
学生の皆様は、卒業後は保健・医療・福祉・臨床心理・教会等の分野での職業を志す人が多数でしたので、私は、「話す」「書く」ということのみならず」、「聴く」「読む」という人間ならではの「話し言葉」「書き言葉」による「言語コミュニケーション」の意義と手法をまずは伝えました。同時に、「身振り」「手振り」「表情」「声音」「服装」「対話の際の相手との位置」などの「非言語コミュニケーション」の持つ重要性についても伝えました。
当時は毎年、「3分間スピーチ」を学生全員に実習として行ってもらっていましたが、聴覚障がいの学生がいた年度には、私が求めたわけではなく、多数の学生自らがスピーチ本番までに「手話」を学び、手話をしながらスピーチを実践してくれました。視覚障がいの学生には耳でスピーチを聴いてもらえるけれども、聴覚障がいの学生には音声が伝わらないので、自分たちが手話で伝えたいと思って身につけてくれたのです。
私は、学生の皆様の聴覚障がいのある同級生に向けた「伝えたい」と思う「おもいやり」が手話を学ぶ意欲と実践につながったことに、私が伝えたかった「コミュニケーションの意義とその実践の在り方」が伝わったのだと幸いに思いました。
この一例を挙げるまでもなく、ルーテル学院大学の卒業生も、現役の学生も、教職員が一人ひとりの学生と固有名詞で関わる「一人ひとりを大切にする」という教育理念に基づいて「心と福祉と魂の高度な専門家を養成する」という本学の使命を果たす在り方を受け止めてくれています。だからこそ、卒業してからも、他者の基本的人権を尊重し、「誰一人も取り残さない」ようにと、各自が求められている役割を一生懸命に果たそうと努めてくれていることと思います。
けれども、どうぞ、決して無理はしないでください。心身ともに、「持続可能性」を尊重してください。ご家族を含めて他者を愛し、守り、皆様の役割と責務を果たすためには、何よりも、まずはご自身の心身の健康確保をはかってください。そして、自分自身だけで課題を抱え込まないでください。
ルーテル学院大学は、今回のメッセージをおとりまとめいただいた直前学長の市川一宏先生、現在の石居基夫学長を中心に、大学全体で卒業生の皆様からのご相談をお待ちしていますし、卒業生と大学との情報共有の機会を大切にしています。
どうぞ、決して躊躇せずに、いつでも大学にご連絡ください。
皆様のご健康とご多幸をお祈りし、どんな時も前向きなご活躍を心から応援しています。
OKAY
(清原慶子元教授(1987~1999)、現学事顧問)
投稿日 20年05月09日[土] 1:56 PM | カテゴリー: カテゴリ無し,共助社会づくり,大学関連,希望ある明日に向かってメッセージ,社会福祉関連