終活について

2019年7月、私の友人が施設長を務める岩手県盛岡市にある五月園において、講演をさせて頂きました。テーマは、『高齢期における生き方〜終活の意味と内容について考える』である。母の看取りの経験、お世話になり亡くなられた方々の生き方から学んだことをまとめる機会となりました。

母は、一人で静岡市伊東市に住んでいましたが、福岡にいる弟家族に良く連絡をし、大切にしてもらっていました。また東京にいる私たち家族とも関わりは深く、晩年は幸せであったと信じています。母を天国に送った後、父母の遺品が詰まっていた家の片付けは、当時東京に勤務していた弟と一緒に行うことができ、彼の献身的な働きなくして、父母の終活を行うことができませんでした。神様が与えて下さった父母に感謝する時でしたが、膨大な荷物があり、また結婚の記念アルバム等の父母が大切にしてきた品物をどのように片付けるか、本当に悩みました。私たちが決断せずに、祖父母を慕っていた孫である私の子どもたちのその判断を委ねることはできません。

ふりかえって、五月園との関わりは長いのです。職場内研修のために何度か五月園を訪問しました。今の施設に建て替える前の、丘の頂きの方にあった時からです。施設長さんは、私が社大の研究所の助手時代に学生であり、その頃から続く仲間です。盛岡市で行われた結婚式にも出席し、彼との思い出はたくさんあります。

また、盛岡市には、私が大学時代の親友がいて、今も彼と仲良くしています。昨年大切な奥さんが亡くなられ、心配しています。奥さんは、まだ彼と結婚する前から知っている高知の方で、本当に心の広い、また思いやりのある方でした。ご冥福をお祈りします。

さて、その際のレジメを掲載します。私にとって、この数年は、健康にいろいろな変化があった時で、死に至るまでいかに豊かに生きていくか、考える機会が与えられました。その意味で、実り豊かな時で、私が考えるテーマのポイントを掲載し、講演の中で補足しました。

  高齢期における生き方〜終活の意味と内容について考える

1.「生きていくこと」について、考えてみます。

①「花は咲くプロジェクト」です。歌詞の一部を紹介します。生き方を示している。

誰かの想いが見える 誰かと結ばれている 誰かの未来が見える 悲しみの向こう側に 花は 花は 花は咲く いつか生まれる君に 花は 花は 花は咲く わたしは何を残しただろう 花は 花は 花は咲く いつか生まれる君に 花は 花は 花は咲く いつか恋する君のために

②聖路加病院の院長で昨年105歳で亡くなられた日野原重明先生は、いのちとは「自分が使える時間のこと」だと言われました。たとえば体の中のポンプ・心臓は、絶えず鼓動しています。これは、体で感じ、医学的には見える。しかし、「自分が使える時間」とは、日々生きていく時間。一人ひとりも他者のために、自分を活かす時間でもあります。

③私が目指す生き方   人生に停年はない。

 老人は夢を見、若者は幻を見る(ヨエル書第3章第1節)

高齢期は喪失の時代であると言われる。加齢によって、身体の機能低下は低下する。愛する家族や親しかった友人を失う悲しみは増えるばかり。しかも仕事は定年を迎え、自分にふさわしい新たな役割を探さなければならない。なのに夢と幻、すなわち明日への希望を持つことができるだろうか。頭を抱えて、明日への歩みを止めてしまう自分が良く見える。だが、「老いの坂をのぼりゆき、かしらの雪つもるとも、かわらぬわが愛におり、やすけくあれ、わが民よ」(日本基督教団讃美歌第一編284番)と賛美歌にあるように、山の頂に向かって歩み続ける兄弟姉妹がおられる。感動する心と希望をもって、明日に向かって今を生きる方々の歩みに私は勇気づけられる。 

 誰にも将来を見通すことはできない。過去の後悔に押しつぶされそうになる。しかし、神の愛のまなざしを心にとめ、日々祈りつつ今を生きることによって、過去の事実は変わらなくとも、過去の意味が変わっていく感動を、神はたえず私たちに与えてくださる。だから見通せない将来に向かって、日々の歩みをとめてはならない。

 そして、最後の時、支えてくれた家族や人びとに感謝することができたなら、それは人生最後でもっともすばらしい証し。感謝する人の命が光る。見看る人びとの思いがその人の命を通して光る。その人を支えてきた神の愛が、その人の人生を通して光り続ける。神の愛は、とどまることなく最後まで私たちに注がれている。

 このような人生に停年はない。

④老い

「〈老化〉と〈老い〉という二つの用語の間には区別が感知される。一つは生物学的概念であり、他は人間学的な概念である。具体的に言えば、〈老化〉というのは、加齢と共に身体的な諸器官とその機能に衰退現象が現れてくる、生物として避け難い必然的ともいえる事実を指す。これに対して、〈老い〉というのは、この事実を柔らかく表現するのにとどまるものではなく、この事実をその担い手である人間一人一人がどのようにして受け止めこれに対処しようとするのか、心の問題として、生き方と態度の問題として考えようとするものである。この両者には視座の相異は見逃しがたい。前者は生物学的もしくは社会学的な性格を主とする問題であるのに対し、後者は主体的、自分自身の生き方に関わる問題として自覚される。哲学的考察や宗教的な信仰が問われるのはここである。」(浜松聖隷ホスピス初代所長 原義雄「死へのプロセスとしての老い」、日本基督教団宣教研究所編『老い・病・死』)

2.死に至るまで生きてことの大切さ(日野原重明 ラストメッセージ NHK)柳田邦男さん(ノンフィクション作家)

“死”をどう生きたか 日野原重明さんの105年

日野原さんが最後まで求め続けた死をどう生きたか、あるいは死をどう生きるか、私たちはどう受け止めればいい?
柳田さん:これは人間のライフサイクルという見方で見ますと、従来のライフサイクルというのは、生まれてから中年期に最高になって、そしてやがて下り坂で死で終わるっていうんですけど、これはとても大事なところが抜けている。
 それは精神性の命なんですね。人間の精神性というのはむしろ、定年後とか病気をしてから成熟して、成長するので、しかもそれは死で終わらないで、亡くなったあとも、その人が残した生き方や言葉というのが後を継ぐ人の中で生き続ける。これは今までの日本の人々の考えの中で支配的だった、老いや死を暗く考えるっていう考えを180度変えて、むしろそれはチャレンジする新しい生き方なんだっていうことを日野原先生は身をもって教えてくれた、わたくしはそういう死後の在り方、「死後生(しごせい)」と呼んでるんですけど、これを考えると今どう生きるかっていうことへの問いかけであり、それが死を生きるということなんだと、こういうメッセージを受け止めています。

3.では、老いが直面する課題を考えて見ましょう。

①人生の歩みの中で直面する課題

・成人前期 外部の価値への適応(就職、結婚、出産)

・成人後期 内なる価値への適応

 体力の危機、性的能力の危機、人間関係の危機(親の死、こどもの自立、友人の死)、思考の危機(成熟感によって新しい努力の停滞)、将来の不安  ユングは、新たな内的価値への模索をこの時期の課題として指摘している。ある意味で、ほんとうに困難な時期は、中高年期であると言っています。

・高齢期(喪失の時代か、創造の時代か)

心身の機能の低下(機能の喪失)、配偶者、親族、友人を失う(関係の喪失)、定年、引退(役割の喪失)、死の恐怖と寿命(生命の喪失)

②疾病の意味

・適応力の低下、・抵抗力の低下、・慢性病になりやすい、・身体的機能と精神的機能の関係が密接、・症状が教科書通りにでない、・腎機能の低下により薬の作用が残り、副作用がでやすい、・骨粗鬆症

③高齢者は必ず認知症になるか   結晶性能力と流動性能力

④知と身体の関係

・自己中心的=心身の機能脳の器質的な変化による思考面や性格面の硬さ、・猜疑心=視力、聴力の低下が邪推、嫉妬、ひがみを生む、・保守性=記憶力の低下と学習能力の低下、・心気性=極端に病気を恐れる傾向。役割の喪失等により体にのみ関心が集中、予備力の低下も要因、・愚痴=過去への関心=行動範囲の狭さ

⑤LIFEとは?

・命

・生活

・人生

4.終活について考える 老人ホームイリーゼ(HP)より

①目的

「これまでの人生を振り返る」「残される家族のことを考える」「友人、知人、今までお世話になった人たちへの思いをつづる」「やり残したことや叶わなかった夢などを書き出す」などを行うことで、余生を通してできること・できないことの整理につながります。 
②終活のメリット
終活で得られるメリットは、主に3つあります。
・自分の意思が家族に伝わり、老後の生活が前向きになることです。

伝えるときはまず「自身の健康状態から切り出す」のがポイントです。
・残された老後生活が充実することです。

・遺産相続のトラブルを回避できることです。

③方法  終活1:エンディングノートを書く
エンディングノートは、「プロフィール」や「葬儀に関すること」などと項目を分けることで書きやすくなり、見る側も読みやすくなります。
・本人情報
名前、生年月日、血液型、住所、本籍地、住民票コード、マイナンバーなど
・自分史
学歴、職歴、結婚、出産、夫婦の記念日、マイホーム購入時期、歴代のマイカー紹介、職場での功績、馴染みの土地、幼少期から各年代の思い出、特技、趣味など
・関係する人物との間柄や連絡先
家族、兄弟、親戚、同居していない家族、養子、家系図、友人、知人、職場関係者、恩人、法的関係の相談者など
・財産について
預貯金、口座番号、公共料金などの自動引き落とし情報、クレジットカード情報、基礎年金番号、各種加入保険、株式、不動産、借入金やローン、骨董品、貸金、有価証券や金融資産など
・介護や医療について
希望する介護や医療施設、費用、後見人(財産管理などを任せられる人)、延命措置の詳細、臓器提供、介護や治療方針の決定者、医療カウンセラーなど
・葬儀について
喪主に頼みたいこと、宗派や宗教、戒名や法名、葬儀業者や会場、遺影写真、参列者リストなど
・お墓について
埋葬方法、希望墓地、購入費用、墓地の使用権者、墓地の継承者、手入れ、お供え物など 
・遺言書について 言書の有無、相続リスト、それらの保管場所など

終活2:遺言書を書く

終活3:お墓を決める