思い出記2003年度(味めぐり)-3

門川町での意外な出会い(食材)

「すだち」は徳島、「かぼす」は大分、そして門川町には、平兵衛酢がある。あまり宣伝をしていないようだが、平兵衛さんが畑で栽培し、その味のあまりの良さに、住民が枝をもらい、わけ木をして広がったそうだ。味はさわやか、すっきりとした酸っぱさで、それを絞ってジュースにしてもほんとうにおいしい。ただ、時間がたっても中味はかわらないが、皮が少し変色していくので、それだけが課題であるとのこと。きっと澄み切った空気と熱い日射しのもとで育っているので、都市に運ばれて数週間すると、その環境で多少変化するかもしれない。でも、味と稀少価値から、私は積極的に推薦したい。

特急で日向駅に到着した時間が昼の時間であったため、門川町の海岸ぞいにある店で食事をした。刺身定食、荒煮定食がそれぞれ1,000円前後であった。写真の通り、新鮮な食材が並ぶ。荒煮も、いくつもの煮魚が味わえる。また御飯もおいしく、めったにしない「おかわり」をしてしまった。

なお、門川、日向の正月料理であるおせちを、いつ食べるかという話になった。私の習慣では、元旦に食べる。しかし、門川では、おせちは12月31日に食べるもの。それも潮が満ちる夕御飯時に食べるとのこと。確か、デンマークでは、クリスマスを家庭で祝うのは24日で、クリスマスツリーに本物のろうそくが飾られ、皆で手を繋いで、歌を歌いながらツリーの周りをまわる。その土地柄を学んだひとときでもある。

日本料理の調べ

新神戸に近い日本料理の店で、夕食をいただいた。神戸の夜景が見える場所にあり、高層階の店はほぼ満席。
 2段重ねの箱の下段には、「秋の香り」がたくさん詰まっていた。まだ緑色の紅葉(もみじ)の葉に包まれた赤いほおずきの殻の中はトマト。また紅鮭に季節野菜がならぶ。それらの赤い色が、紅葉の緑と逆転していておもしろい。
 また紙の鍋料理は始めての出会い。目の前に味噌汁の入った紙の鍋が置かれ、火の気のない磁気のコンロの上に置かれると、だんだん湯気が立ってくる。次々に肉や野菜やうどんが入れられ、鍋が完成した。火の気のないところに、紙の鍋の中で創られる鍋料理に、私はあっけにとられた。まさに神がかりである。

「鮭の白子焼き」と「豚角煮大根」

早朝に三鷹から東京駅、新幹線のぞみで名古屋駅を経て、近鉄特急で三重県の津に着いた。講演の終了後に、再び名古屋に行き、名古屋始発の特急に乗り、長野駅に着いたのは、午後9時。
 遅い晩御飯となったが、気に入っている「もみじ茶屋」に行き、いくつかの料理を頼んだ。角煮は、たっぷり煮つけた大根の上に、柔らかくなった豚肉が、さらにその上にはネギと辛しが置かれている。これで600円。また白子焼きを食べるのは始めてであったが、はち切れんばかりに「実」がつまっており、「味」を堪能した。380円。
 疲れをいやして、あすから頑張ろう!

豚の角煮
鮭の白子焼き

おおさわ屋「黒糖まんじゅう」

長野市信濃町にある一番古いお菓子屋さんが、おおさわ屋。商店街から国道沿いに移転し、野尻湖にちなんだ「ナウマン子象」や「黒姫山」を売り出していた。いずれも、とても誠実な店主の人柄が良く分かる、こだわりの味だそうである。
 最近、葛を配合させて歯ごたえを出し、そして黒糖を用いて健康に配慮した「黒糖まんじゅう」を売り出し、長野駅でも売られるようになったそうである。
 長野市社会福祉協議会の地域福祉推進委員会の座長をつとめることになり、打ち合わせの時に、職員で信濃町に住んでおられる中堅のTさんが持ってきて下さった。そのおいしさと個性に驚き、思わず由来を聞いて、店主の創作努力が結実したまんじゅうだと分かり、再度感動した。努力して満足のいくものが完成された時、それが活かされる社会がここにある。
 売り切れに御注意。

季節限定のまんじゅう

またまた長野市社協のTさんのお薦めは、「紫一味」というお菓子。中にぶどうが一つ入っており、口の中でぶどうの味と、甘さを抑えたかわのバランスがとても良い。一瞬の驚きと、後に残る余韻に浸ることができる。190円でやや高いが、その分、笑顔が返ってくるだろう。