長野県飯綱町での講演

 2018年2月、長野県飯綱町で「共に生きる地域を目指して〜支える支えられる地域から、互いに支え合う地域へ」というテーマで、講演をしてまいりました。私は、1997年に三水村、そして2009年に飯綱町に来させて頂きました。最初は、全社協地域福祉部の委員会でふれあいいきいきサロンの検討を行い、そのモデル地区として三水が選ばれ、委員であった三水村社協の現事務局長沖さんや、住民の方々とお会いしました。当時の経験を踏まえて、月刊福祉に以下の論文を書いています。

サロンの特徴は、以下の点にあります。

①多様な活動形態:同サロンの活動にあたっては、形にこだわり過ぎないで、その地域や参加者にあった場を創ることが大切である。同サロンの活動内容としては、趣味を中心とした活動型、会食型、話し合いを通したふれあい活動型、健康チェックを取り入れたミニデイ型等、多様な活動が見られる。また地域で行われているデイケアを利用する必要はないが、地域で孤立している高齢者等の機能低下を予防する体操教室等の活動も行われており、予防、リハビリ、在宅ケア等、活動の範囲は広い。さらに利用者として、高齢者や精神障害者、子どもを養育する母親のそれぞれを個別に対象とする活動がある一方、高齢者や障害者、児童のすべてを対象にしたものも見られる。それぞれ地域の課題も異なるのであり、企画力や創造力を自由に生かして、できることから始めていくことが大切である。

②柔軟な運営:同サロンは、利用者の要望とボランティアの力量に応じて、その活動の姿を変えていける特徴がある。たとえば、日頃の活動を通して、サロンの利用者である高齢者と若い層の、世代を越えた交流が必要と思われた時、今までの運営を柔軟に変えていく勇気が必要である。また活動実績を積み重ねていく中で、新たな福祉問題を認識した時には、その状況を敏感に察し、新たな活動内容を展開していくことも可能である。

③みんなが参加者:同サロンを運営するにあたっては、利用者とボランティアとの意識の上での垣根を取り払うことが大切である。長野県の三水村では、利用者も自主的に活動に参加し、協力してサロンの企画を立てている。サロンの利用者の意思決定は、最大限に尊重するべきである。

④地域のサービスや専門家との連携:在宅福祉サービスが、きわめて広範かつ多様な内容を備えているあることは、既に述べた通りである。同活動にあたっては、社協の担当者はもちろんのこと、地域で提供されている多様な保健医療福祉の専門家との協力を考えていくことも大切である。何故なら、運営上の問題が生じた場合にも、適切なアドバイスが受けられるし、サロン利用者のニーズの変化に対応して、利用者に適した活動を組み立てていくことが容易になるからである。

⑤利用者の生活にもっとも接近した活動:地域住民が同サロン活動のボランティアになることによって、利用者にとってもっとも身近な場所で活動が行なわれることになる。たとえば、地域の身近な公民館やボランティアの自宅等を拠点として活動することによって、利用者は比較的楽に通うこともできるし、近隣の住民と出会う機会が増えることにより、生活の範囲も広がることが期待される。

『小地域における福祉の仲間づくりを推進する〜ふれあい・いきいきサロンの意義と運営』 月刊福祉 1997年

 また、2回目は、国の補助をうけた飯綱町認知症地域支援事業に委員として参加した時でした。

 平成19(2007)より2年間、飯綱町は補助金を受け、住民が協働した、認知症をもつ高齢者や家族への理解の促進と支援の推進に関する検討を行った。ケアする家族、医師、医療ソーシャルワーカー、ケアマネジャー等保健医療福祉に関わる専門職、司法関係者、消防や警察等の公的機関代表、地域の様々な団体・企業等が加わる委員会を組織し、さらに医師等による専門チーム(早期発見、認知症支援システムづくり)、児童・生徒啓発チーム(学校における学習プログラムの開発と普及)、うんまくボケる戦略チーム(健康維持、社会生活継続をめざしたプログラムづくり)というチームに分け、町をあげて、認知症の理解を広げることをめざしたのである。

なお、その際、報告記録などを行う事務局を保健福祉課、包括支援センター、社協が担う体制をつくった。具体的には、保健福祉課内会議、コーディネーターと事務局で構成されるスタッフ会議を行い、進行管理を徹底している。

事業開始前後に、全戸を対象にした「意識実態調査」を実施し、認知症地域支援推進会議、チーム会議にて内外部識見者、チーム委員へ報告、課題提起をした。定期的(3か月に1回程度)に認知症地域支援推進会議を開催(進行は行政)し、内外部識見者の助言、評価、またチーム代表者の意見から見直しを行っている。さらに、住民を対象に、認知症の理解を進めるための地域福祉フォーラムにおいて報告している。

<考察>

行政、社会福祉協議会が、計画段階から、who(主体)、whom(対象)、why(目的)、what(内容)、when(期間)、where(場所)、how(方法)、how much(費用)について、基本設計を住民や関係者に示し、働きかけている。なお、数量的目標が立てにくい場合には、task goal(事業の目標)、process goal(問題の発見、問題の共有、支援計画の策定、実施、再評価という一連のプロセス目標)、partnership goal(関係者の役割を確認し、協働して問題の解決に当たる目標)を設定し、取り組んでいくことが大切である。その結果、取り組みの意義と課題が明らかに理解で、今後の参考にできる。

飯綱

飯綱町は、長野県北部に位置する約11,000人の農業中心の町である。2005年に牟礼村と三水村が合併し飯綱になったが、私の関わりは、三水村時代のふれあい生き生きサロンのプロジェクトに始まり、本事業においては学識委員として参加した。

「多世代交流・共生のまちづくりの施策・実践と地域社会の挑戦」単著『人口減少社会における多世代交流・共生のまちづくりに関する研究会報告書』全国市長会2016年

  2018年2月、再び、飯綱町を訪問させて頂きました。飯綱町は、過疎高齢化が進み、高齢者人口は、36パーセントに達していると、行政の方が報告なさいました。しかし、援助が必要な高齢の方々を支えておられているたくさんの方々が、講演を聞きに来られていることを知りました。私の目から見ると、それらの方々がおられることが、飯綱の強みと思います。そして、地域福祉活動の実績がある。それはかけがえのないこと。その方々に応援メッセージを送ることが私の役割でした。もし、その役割を果たすことができたなら、うれしいと思っています。
 講演の終了後、昼食に連れて頂きました。私は、数限定の暖かい鴨南蛮蕎麦を注文しました。そしたら、盛り蕎麦と鴨南蛮が入った鍋、卵が出されました。鍋に入れて食べます。温まりました。
  でも、蕎麦屋さんの中は暖かいが、そとは厳寒でした。厳しい社会にあって、温まる場所を提供し続けるのが、福祉の役割と信じています。