ルーテル学院大学に33年ー学生の成長に感謝

2016年、私は、ルーテル学院大学に勤めて33年目になります。

この間、感謝したいことはたくさんありますが、中でも、学生が成長する姿を見て、その一人ひとりの力に敬服することばかり。今回も、感謝の

大学では、毎日の礼拝で、学生がメッセージを述べます。4年の女子学生は、メッセージの途中、お世話をしていた高齢の女性のことを思い出し、涙を流しました。このような学生を教えていることに感謝したいと再度思いました。

<スピーチ>

「私が体験したアルバイトでの出来事をお話ししたと思います。私は、高齢分野の訪問介護のアルバイトを大学2年生の9月から現在まで行っています。なぜ訪問介護のアルバイトをしたかというと、ヘルパー二級という資格を持っていたし、なにより時給がよく、身体介護の時給は1800円です。私は、資格を取得し、初めての福祉の現場でしたので、当時は、おむつ交換などの介護技術のことに頭がいっぱいで利用者さんにまで目を向ける事が出来ていませんでした。

そんな時、ある認知症の利用者さんの身体介護を担当する事になりました。初めてお会いした時、とっても元気でお綺麗な方といった印象を受けました。その利用者さんは、私が暖かいタオルで体を拭くと「あぁ、気持ちがよいわ」「あなたはいつも体を拭いてくれるわね」「ありがとう」といつもそう言いました。とても嬉しく、このアルバイトをしてよかったと心の底から感じました。そして、その利用者さんのお宅を訪問するのが楽しみになっていきました。今まで、介護技術のことしか頭になかった自分にとって、その利用者さんからの言葉は、自分が行う介護や業務の役割は、その利用者さんにとってかけがえのない事なのだと認識させました。それからは、業務内容や技術の事だけではなく、利用者さんとのコミュニケーションの時間を大切にし、利用者さんにとっての介護とは何か、それはどうあるべきなのか考えるようになりました。

利用者さんとの関わりの中で、時間が経過するにつれ、関係性も深まっていきました。しかしながらそれと同時に、利用者さんの身体能力も衰退し、結果的にベットに寝たきりになってしまいました。食事もあまり取ることが出来ず、日に日にやせ細ってしまっている事を感じていました。寝ている姿や呼吸をすることでさえ苦しそうでした。その様な中でも、温かいタオルで背中を拭くと今まで通り「あったかい」と私に伝え、感謝の気持ちを述べて下さいました。ある日、いつものように訪問しベットに向かうと様子が少し変でした。声をかけても返事はなく、そこで亡くなっている事に気が付きました。いつかはこの日が来ると予想はできていたと思います。しかし、いざその日が訪れると、受け入れる事が出来ず頭の中が真っ白になりました。上司に連絡をしまっている10分の間、とても長く感じました。利用者さんの死から一週間は、悲しみと寂しさしか感じる事が出来ませんでした。

けれど、利用者さんの死を経験し、自分の福祉職に対するイメージや認識が変わりました。今までは、誰にだってできる、日の当たらない地味な仕事だと感じることがありました。しかし、福祉に携わる仕事というのは、利用者さんの人生に、携わることに等しく、自分自身の役割は利用者さんの人生にとって重要な役割を担っていて、利用者さんの人生に深くかかわる仕事なのだと感じました。そして何より、今回その利用者さんを、看取ることが出来、最後まで利用者さんに寄り添うことができたと思います。介護は誰にでもできるかもしれないけど、自分にしかできない関わりや援助があるかもしれない。社会的に日の当たらない職業かもしれないけれど、利用者さんから日の光を感じ、自分が利用者さんを照らせるような関係性を作れることを実感しました。今日お読みした聖書の箇所に、「はっきり言っておく、私の兄弟である最も小さい者の一人にしたのは、わたしにしてくれたことなのである」とのイエスさまの言葉がありました。小さな者への小さな行為でもイエス様は喜ばれることだと思います。実際に私もその利用者さんとの関わりを通して学びました。大切な働きに関わらせて頂いたことを深く感謝しています。」

今度、女子学生に学内で会った時には、再び、ありがとうと言おう。