地が揺れる中、守られた礼拝 ~日本福音ルーテル福岡西教会

 1970年、中央区今川町の宣教師館での礼拝に始まる福岡西教会は、1980年、現在の新教会堂が竣工した。教会員の末松清治氏の建築による教会は、ドーム型でノアの箱船の意味を持っている。だから頑丈で、どのような荒波にも耐え、航海することができる。
 2005年3月20日午前10時50分頃。確か礼拝が始まり、説教に入る直前ではなかっただろうか。突然起こった揺れは、一気に震度6弱にまで大きくなる。礼拝堂には一切問題はなかったが、礼拝堂の中では、祭壇の花瓶は落ちて割れ、祭壇の前に水が広がる。天井の窓は揺れ、台所から食器の割れる大きな音が響いている。
 今まで福岡では経験したことのない地震に、数分だろうか、呆然として、一切の行動がとれない時間があった。しかし、しばらくして、礼拝に参加しておられた方々から自然に声が挙がる。そして水を拭き取り、割れた花瓶を片づけ、続く余震の中、落ちてくる危険性がある十字架の蛍光灯を囲むように皆が座り、礼拝が続けられた。
 地震で風が起こるのだろうか。遠くから波の音が聞こえ、それが風となって教会に近づき、窓を揺らす。そして、間髪を入れずに起こる余震。外は、瓦が至るところで落ち、壁にひびが入る。
 人間の営みが、まったく通用しない自然の驚異。電話や携帯通話が一切利用できない。礼拝後に弟家族と会い、泊まらせてもらう予定だった私は、海岸に比較的近い場所に住んでいる弟家族の安否を心配した。そして、迎えに来てもらうことだけ考え、携帯電話以外、住所さえもメモしてきていない私が、どのように彼らの所に行き着くのか不安な気持ちになった。
 その時、メールが届いた。「大丈夫か」との問い合わせ。そして「こちらは大丈夫」との知らせ。メールが通じるとは、考えてもみなかった。ほんとうによかった。
 ふりかえって、礼拝中、度々余震の恐怖に心が引き裂かれそうになった。だから、私は、命も、自分の今も明日も、神の御手に委ねることしか術がなかった。しかし、普段より、もっと大きな神の愛を確信できた時でもあったかもしれない。