鹿教湯温泉
2004年7月の暑い日、仕事で鹿教湯温泉に泊まる機会があった。上田駅から丸子を通って約1時間。湯治場という雰囲気の村にある。おみやげ物屋が数件、そして寿司屋を含む食堂や軽食店が数件があるが、八百屋、酒屋も兼業しているような所もあり、生活の音が聞こえ、ゆったりと時間が過ぎていく。歓楽街とはまったく異なる、安らぎの空間である。私は、前日に食べたトマトの美味しさを忘れられず、翌朝、トマト1箱(もぎたての約25個、980円)と朝摘みのブルーベリー4箱(1箱380円)を買った。運ぶことの手間をまったく無視して。 また約1時間に1本の間隔で運行されるバスの発車時刻までしばし時間があったので、20分程の行程の川沿いの名所を訪ねた。 まず驚いたのは、一般道から川を渡ると、そこは別世界。蝉の泣き声、川のせせらぎ、肌にやさしい涼風等、そして時々現れる小さなかえる。 学問の神様が祭られている文殊堂(長野県宝)は、学ぶことの厳しさは、そこに至るまでの階段に表れている。まさに険しい登り坂である。しかも上から降りる時は、より恐い。学ぶことを捨てることを許さないように。 しかし、学ぶこととは、それぞれのやり方と、それぞれに求める内容が異なるのであって、しかも生涯にわたって、学び続けるもの。そこに行き着く方法は、3つある。五台橋をわたり、正面からのぼる方法と紅葉橋とみどり橋の両側から辿り着く2つの方法であり、両側からのこの世界に入る方法は、多少の起伏があるもののバリアフリーである。その人にあった歩みを許されている。 ふるさと創成基金等により、多くの温泉が掘り起こされた。それは温泉旅館にとって、確かに打撃。またたくさんの歓楽街が、家族志向が強まる若者や中年層、団体客の意識の変化に対応できず、まさに正念場を迎えている。個性がないと地元観光協会の方が言われているが、だからこそ、鹿教湯温泉には、現在の需要に応じた個性はたっぷりあると思う。肌に優しい温泉、落ちついた環境、地元産のおいしい野菜、素朴だが優しい対応、健康に配慮した食事、地元のネットワーク、有力な病院による医療の可能性等々、組み合わせればこれは強力な宣伝になる。ぜひ、全国の温泉復興に貢献してほしい。
投稿日 04年07月25日[日] 4:13 PM | カテゴリー: 思い出記