2013年度までの感謝(学長として)
感謝
今から丁度30年前、研究成果もなく、また教育経験も浅かった私に、本学院で働く機会を与えて下さったことに感謝しています。基盤を築いて下さり、お辞めになった後もたえず応援して下さった先生方、苦しい時にいつも支えて下さった卒業生諸君、後援会や教会の方々、また共に歩んで下さった関係学校、関係福祉施設の方々への30年間のご恩を忘れることができません。
また12年間の学長としての歩みを振り返りますと、大変な仕事でしたが、その分、感謝する機会が増えました。しかし、学長として達成した誇りよりその十倍の後悔を覚えています。
1期目は、はじめて信徒が学長になったのですから、まずできるだけ多くの教会を訪問し、信徒の方々にお会いし、大学を知って頂こうとチャレンジしました。現在、訪問できた教会数は、NRKと福音ルーテル教会の4分の3に達すると思います。
2期目には、大学の外部環境が急激に厳しくなり、全国的にも福祉学科の志願者が激減し、本学も予想しもしなかった定員割れを起こしました。「床が抜ける」ということを実感した時でした。しかし、総合人間学部キリスト教学科、社会福祉学科、臨床心理学科への改組をし、教育の幅を広げたことと、また社会福祉学専攻博士後期課程と臨床心理学専攻修士課程の開設によって高度の専門職教育を目指したことによって、難局を打開することができました。さらに神学校創設100年目を、学院全体で祝い、浦和ルーテル学院・聖望学園・本学院の三校合同演奏会を行った東京カテドラル聖マリア大聖堂、100周年記念会を開催した三鷹市民公会堂にあふれた関係者の方々を見て、大学の復活を確信することができました。神学校の100年の実績が、大学を救ったと思っています。危機をチャンスに代えて下さった各教職員、関係する方々に感謝しています。
3期目は、改革の時でした。2014年4月より、大学は人間福祉心理学科キリスト教人間学コース、福祉相談援助コース、子ども支援コース、臨床心理コース、地域福祉開発コースになります。この改革は、「厳しい時だからこそ、皆が協力をして最善の一手をうつ」「計画を作成した中堅がそれを死守する」という方針のもと、中堅が中心になって生み出した改革です。力のない学長が12年以上学長職にいることは大学に迷惑をかけることになるとわかった時、神様は信頼する教職員を大学の将来を任せられる人材として育てて下さいました。神学校の江藤先生に大学の運営責任を委ねますが、本改革をブラッシュアップして、光を放ち続けて頂きたいと思っています。
この規模の大学でうまくいっている例がなく、いつも手探りで進まなければならなかったこと、将来を予測してたえず組織を整えないと、土俵から一気に押し出される危険性があることは、本当にプレッシャーでした。そして、狭い器、リーダーシップに欠ける能力、人間的弱さを痛感しています。3期目は、困難な時には、「わたしは主のはしためです。お言葉どおり、この身に成りますように」(ルカ1:38)というマリアの言葉が繰り返し聞こえ、覚悟を決め、いくつもの決断をすることができました。
振り返って、私の在任中に敬愛する石原寛理事長が天国に召されました。また、卒業生や在学生や、学院に関わって下さった関係者の方々の中にも天国へ召された方々がおられました。お一人お一人を思い出しますと、本当に辛く悲しい気持ちになります。また、PGCの閉鎖は本当に残念であり、責任を感じています。
私は、本来の姿である、研究者、教育者、実践者に戻り、「コミュニティの再生」「困難な状況にある人々を支援する専門職のバックアップ」「被災地支援」に取り組んでいきます。ルーテル学院で得た希望の光を、届けていきます。
学長としての12年、本当にありがとうございました。
2014年3月31日
市川一宏
PS.大切な卒業生Iさんのお家のクリスマスツリーです。とても暖かみのあるツリーだと思いました。病気で天国に先立たれた彼女の分まで、社会で踏ん張ってみます。それが、教え子Iさんに対する御礼。ありがとう。たくさんの方々がお支え下さったことを、決してわすれません。私は、自分の原点に立ち、社会福祉の実践現場、教育現場、研究現場で踏ん張ってみます。今後とも、お支え下さい。