社会福祉法人『麦の家』in長野県中川村

上智大学教授であられた松本栄二先生が理事長である麦の家を訪問しました。松本先生は、ソーシャルグループワークの第一人者であり、日本における実習教育の礎を築かれた方です。松本先生よりお電話があり、中川村での講演をお願いしたいとのこと。また、その前日に、近隣のソーシャルワーカーの勉強会があるので、講師をお願いしたいとのご依頼でした。先生からのご依頼をお断りできるわけがなく、すぐに日程の調整に入りました。新宿駅からバスで約4時間そして、先生が建設から関わられていた『麦の家』を訪問する機会が与えられました。グループホームの案内書を掲載します。そのいたるところで、聖書の「一粒の麦、地に落ちて死なずば、唯一つにてあらん、もし死なば多くの実を結ぶべし」の理念に基づく社会福祉実践共同体を目指す」という考え方がちりばめられています。

私は、援助の原点を学びました。

個室

松本先生、奥様、山辺先生

以下は、2007年の記事です。

「一粒の麦、地に落ちて死なずば、唯一にて在らん」-を基本精神に、長野県で初めて「単独型痴ほう性高齢者向けグループホーム「麦の家」を開所、今年10年目を迎える。
「痴ほう(認知症)というと、嫁が親切に世話をしないからなどと誤解されていたが、認知症は病気、咳のようなもの、やっと正しく理解されるようになった。グループホームは利用者を介護するだけが仕事ではない。利用者が変われば、家族が変わる。家族が変われば、地域も変わっていく。地域福祉の意識を変えていく拠点である。地域福祉の意識変革こそ、21世紀のグループホームの方向」。
93年、中川村の健康福祉大会に講師として招かれたことをきっかけに、95年夏、上智大学のゼミの学生と村に訪れ、農家を借り、単身高齢者世帯と超高齢者夫婦世帯の支援ネットワークについて社会福祉調査を実施した。その中で、村の古老や痴ほう化した高齢者と出会い、人としての温もりや人間愛を見出し、「彼らとともに住むことが幸せ」と確信し、4人の仲間とグループホーム建設を目指した。
98年、「麦の家」は利用者5人という最小規模の単独型グループホームとしてスタート。1年後「麦の家の利用者こそ、家族内関係の再生を促し、共生を目指す家族福祉の原点。利用者の変化が地域の福祉化を促す力となっている」ことを確信したという。
「麦の家」は「住みなれた地域で、自分の家庭生活のリズムを変えることなく、または、可能な限り、それに近い時間と空間を持つ場でありたい」と言う考えから、木と紙と土でできた山小屋風の家が並ぶ。現在、定員12人で、2人用が3棟、夫婦棟、5人用1棟。1棟ごとに玄関、キッチン、風呂、居室があり、靴を脱ぎ、履くことで、個人と共同生活の場をはっきりと分けている。だから、利用者は個室のことを「私の家」と言う。
「麦の家」は入居時に、週1回以上面会に来る、来た時は「文句をいう」という契約をする。預けぱなしではケアはできない。来ると、お礼ばかり言う人がいるが、苦情を聞くことで、介護が改善される。
「認知症はすばらしい病気。建前と本音を使い分けることもなく、幼子のように、人間性がもろに出る。認知症のお年寄りこそ、社会を照らす光だ」とも。
「麦の家」は地方の福祉実践活動の一環として、月1回、周辺福祉関係諸施設のスタッフや指導者が実践事例を持ち寄り、研究、討議をしている。
また、10月28日午前9時20分?午後4時30分まで、中川村文化センターで、「第2回麦の家・地方の福祉実践研究集会」を開く。上智大学名誉教授のアルファンス・デーケン博士(生と死を考える会全国協議会名誉会長)が「生と死、そしてユーモアを考える」。松本理事長が「生と死を選ぶことの出来る場を創る-認知症高齢者向けグループホームから考える-」と題してそれぞれ講演する。「死を看取るということについて」をテーマにパネルディスカッションもある。詳細は麦の家(TEL88・4069)