日本CGNTV「本の旅」でインタビューを受けました
日本CGNTV「本の旅」で、『「おめでとう」で始まり、「ありがとう」で終わる人生」』が取り上げられ、司会の久米小百合さんからインタビューを受けました。
番組は以下のページから、「番組を見る」をクリックすると、番組一覧のページにとびます。そちらのNO.276でお聴きいただけます(PC環境によって、300Kか50Kを選んでクリックしてください)。
Ichikawa's Office
大学関連
日本CGNTV「本の旅」で、『「おめでとう」で始まり、「ありがとう」で終わる人生」』が取り上げられ、司会の久米小百合さんからインタビューを受けました。
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日本学術会議社会学委員会は、大学における社会福祉分野の質保証について報告をまとめ、公開しました。今回の21日に大正大学で開催された以下のシンポジウムは、改めてその意味を確認するものでした。
私は、指定討論者として、以下のことを申し上げました。 「学術会議連携会員として、また日本社会福祉士養成校協会前会長白澤先生を長とし、現副会長上野谷先生、前副会長で現相談役である3名を作成委員としている今回の報告書に対し、責任をとる立場であり、その意味で意見を申し上げたい。
1.今回の報告は、各大学の多様性を尊重し、今後のカリキュラムの選択肢を提示した意味で、現実にあったものである。
2.市民性の涵養をめぐる専門職教育と教養教育についての記述は、福祉教育の根幹である。すべての学生に対する福祉学教育は、意義がある。但し、自分の将来に向けて、ソーシャルワーカーとしてのアイデンティティを養う教育も重要視する必要がある。
3.国際NGO論やNPO論、まちづくり論等の幅広い学問を取り入れたカリキュラムの可能性を模索している。
4.価値を踏まえて役割を実行する福祉マインドを示した。そして。獲得すべき基本的能力を、①個人の尊厳を重視し支援する能力、②生活問題を発見し、社会化・普遍化する能力、③社会資源を調整・開発する能力、④社会福祉の運営に貢献する能力、⑤権利を擁護する能力、⑥個人の力を高め社会を開発する能力と示した。
5.社会福祉専門職間のネットワークに留まらず、保健学、医学、看護学、教育学、介護福祉学等の隣接科学との連携教育を推進し、他領域の従事者とのネットワークを模索し、幅広い知識をもったソーシャルワーカーの養成を目指した点で、現場に通用する人材の育成に寄与する。
6.諸外国の専門職教育との連携を主張している。」
未来を切り開く社会福祉専門職教育の存在意義を、広く示し、幅広い理解を得るためのさまざまな行動が行われている。社会で本当に大切な役割を担うソーシャルワーカーの教育の意味を知って頂くさまざまなチャレンジをしていきたい。
三鷹ネットワーク大学は、市民、教育機関、産業、市行政が共につくる機関です。私も、設立当初より、副理事長を務めさせて頂いてます。理事長である清成忠男先生のリーダーシップのもと、実績を積み重ねてきています。
2014-0522_三鷹ネットワーク大学総会集合写真
感謝
今から丁度30年前、研究成果もなく、また教育経験も浅かった私に、本学院で働く機会を与えて下さったことに感謝しています。基盤を築いて下さり、お辞めになった後もたえず応援して下さった先生方、苦しい時にいつも支えて下さった卒業生諸君、後援会や教会の方々、また共に歩んで下さった関係学校、関係福祉施設の方々への30年間のご恩を忘れることができません。
また12年間の学長としての歩みを振り返りますと、大変な仕事でしたが、その分、感謝する機会が増えました。しかし、学長として達成した誇りよりその十倍の後悔を覚えています。
1期目は、はじめて信徒が学長になったのですから、まずできるだけ多くの教会を訪問し、信徒の方々にお会いし、大学を知って頂こうとチャレンジしました。現在、訪問できた教会数は、NRKと福音ルーテル教会の4分の3に達すると思います。
2期目には、大学の外部環境が急激に厳しくなり、全国的にも福祉学科の志願者が激減し、本学も予想しもしなかった定員割れを起こしました。「床が抜ける」ということを実感した時でした。しかし、総合人間学部キリスト教学科、社会福祉学科、臨床心理学科への改組をし、教育の幅を広げたことと、また社会福祉学専攻博士後期課程と臨床心理学専攻修士課程の開設によって高度の専門職教育を目指したことによって、難局を打開することができました。さらに神学校創設100年目を、学院全体で祝い、浦和ルーテル学院・聖望学園・本学院の三校合同演奏会を行った東京カテドラル聖マリア大聖堂、100周年記念会を開催した三鷹市民公会堂にあふれた関係者の方々を見て、大学の復活を確信することができました。神学校の100年の実績が、大学を救ったと思っています。危機をチャンスに代えて下さった各教職員、関係する方々に感謝しています。
3期目は、改革の時でした。2014年4月より、大学は人間福祉心理学科キリスト教人間学コース、福祉相談援助コース、子ども支援コース、臨床心理コース、地域福祉開発コースになります。この改革は、「厳しい時だからこそ、皆が協力をして最善の一手をうつ」「計画を作成した中堅がそれを死守する」という方針のもと、中堅が中心になって生み出した改革です。力のない学長が12年以上学長職にいることは大学に迷惑をかけることになるとわかった時、神様は信頼する教職員を大学の将来を任せられる人材として育てて下さいました。神学校の江藤先生に大学の運営責任を委ねますが、本改革をブラッシュアップして、光を放ち続けて頂きたいと思っています。
この規模の大学でうまくいっている例がなく、いつも手探りで進まなければならなかったこと、将来を予測してたえず組織を整えないと、土俵から一気に押し出される危険性があることは、本当にプレッシャーでした。そして、狭い器、リーダーシップに欠ける能力、人間的弱さを痛感しています。3期目は、困難な時には、「わたしは主のはしためです。お言葉どおり、この身に成りますように」(ルカ1:38)というマリアの言葉が繰り返し聞こえ、覚悟を決め、いくつもの決断をすることができました。
振り返って、私の在任中に敬愛する石原寛理事長が天国に召されました。また、卒業生や在学生や、学院に関わって下さった関係者の方々の中にも天国へ召された方々がおられました。お一人お一人を思い出しますと、本当に辛く悲しい気持ちになります。また、PGCの閉鎖は本当に残念であり、責任を感じています。
私は、本来の姿である、研究者、教育者、実践者に戻り、「コミュニティの再生」「困難な状況にある人々を支援する専門職のバックアップ」「被災地支援」に取り組んでいきます。ルーテル学院で得た希望の光を、届けていきます。
学長としての12年、本当にありがとうございました。
2014年3月31日
市川一宏
PS.大切な卒業生Iさんのお家のクリスマスツリーです。とても暖かみのあるツリーだと思いました。病気で天国に先立たれた彼女の分まで、社会で踏ん張ってみます。それが、教え子Iさんに対する御礼。ありがとう。たくさんの方々がお支え下さったことを、決してわすれません。私は、自分の原点に立ち、社会福祉の実践現場、教育現場、研究現場で踏ん張ってみます。今後とも、お支え下さい。
市川一宏(いちかわかずひろ)
1.ルーテル学院大学・人間総合学部社会福祉学科・大学院人間福祉学研究科社会福祉学専攻
2.学事顧問・教授
3.略歴
早稲田大学法学部、日本社会事業学校研究科、東洋大学大学院社会学研究科社会福祉専攻博士前期課程・後期課程、ロンドン大学ロンドン・スクール オブ エコノミックス(LSE)特別研究員2002~2004年
4.専門分野:社会福祉制度政策・地域福祉・高齢者福祉
5.研究テーマ:地域の福祉力を高め、孤立を防ぎ、「おめでとう」で始まり、「ありがとう」で終わる一人ひとりの人生が守られる地域社会の創造をめざす。
全国・都道府県・市区町村の行政、社協、民間団体における計画の策定、実施、評価および調査研究、人材養成・研修等に多数関わる。
6.学会等の活動
日本キリスト教社会福祉学会会長、日本社会福祉士養成校協会相談役、日本精神保健福祉士養成校協会理事(2013年5月まで)、日本社会福祉学会役員(未定)、地域福祉学会理事、日本学術会議連携会員・社会学委員会福祉系大学院あり方委員会委員、福祉系大学経営者協議会監事、21世紀キリスト教社会福祉実践会議委員、認定社会福祉士認証・認定機構運営委員・研修認証委員会委員長、三鷹ネットワーク大学副理事長、
7.最近の主な学外活動
・家庭裁判所調査官補採用Ⅰ種試験第一次試験専門試験(記述式)問題作成者
・国際基督教大学非常勤講師「社会福祉学」
・石巻市社協地域福祉活動計画作業部会アドバイザー(2013年3月まで)『石巻市地域福祉活動計画』
・三鷹市健康福祉審議会副会長(2013年7月まで)、三鷹市社会福祉協議会副会長
・小金井市介護保険・高齢者保健福祉総合事業計画策定委員会委員長(2012年9月まで)
・小金井市社会福祉協議会地域福祉活動計画作成アドバイザー『小金井市地域福祉活動計画』
・武蔵野市健康福祉総合計画策定委員会委員長、地域福祉計画部会部会長
・西東京市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画策定委員会委員長
・調布市高齢者福祉推進協議会顧問
・ほほえみサポートちよだ:ちよだ福祉サービス利用援助センター運営委員会委員長
・世田谷区「地域支えあい活動助成事業」審査委員長(2012年10月まで)・世田谷区共同募金配分委員会委員長、世田谷区社会福祉協議会地域福祉活動計画策定アドバイザー
・練馬区地域福祉パワーアップカレッジ学長、介護保険事業計画策定委員長
・長野市社会福祉協議会地域福祉活動計画評価委員会委員長(2013年3月まで)
・長野県小地域における地域支え合い体制づくり研究委員会委員長(2013年3月まで)
・宮崎県社会福祉協議会第4次計画策定委員会アドバイザー『第4次宮崎県社会福祉協議会経営基盤強化推進計画』
・東京都社会福祉協議会総合企画委員会委員長、理事
・東京都高齢者保健福祉計画策定委員会委員長(2013年3月まで)
・神奈川県社会福祉審議会会長、地域福祉推進部会会長、高齢者保健福祉計画評価・推進等委員会委員長
・全国社会福祉協議会中央福祉学院運営委員長、民生委員・児童委員研修体系検討委員長(2013年5月)、
・横浜保護司選考会委員
・地域福祉社会構築研究会(清成忠男会長)委員
8.法人関係役員
・学校法人九州ルーテル学院理事
・学校法人浦和ルーテル学院評議員
・るうてる法人会連合人材養成委員会委員
・公益財団法人愛恵福祉支援財団評議員
・東京老人ホーム理事(2013年7月まで)
・日本聖書協会評議員選定委員会委員(2013年3月まで)
9.主な編著書(2013年度を中心に)
・(単著)2009年5月『知の福祉力』人間と歴史社
(書評:阿部志郎先生「ほんだな」『月刊福祉2009年8月号』全社協p.100、岡本榮一先生「書評」『キリスト教社会福祉学研究第42号』日本キリスト教社会福祉学会p.135—136、『社会福祉セミナー2010年4月〜7月号』NHK出版p.135、福祉新聞2009年)
・2013年3月日本学術会議社会学委員会社会福祉学分科会『災害に対する社会福祉の役割―東日本大震災への対応を含めて』(提言)分担執筆
・2013年4月1日「地域の福祉力」『NHKテキスト社会福祉セミナー(4月→7月)』p.32〜47、NHK出版
・2013年6月監修『信州流まめってぇ読本』長野県社会福祉協議会
・2013年6月『民生委員・児童委員研修のあり方に関する検討委員会報告書』<民生委員・児童委員研修教材>『民生委員・児童委員研修ワークブック』『民生委員・児童委員活動事例集1』
・2013年12月「認知症になっても暮らせるまちづくり」『認知症ケア事例ジャーナル』第6巻第3号、日本認知症ケア学会
・2014年3月第3章2節「市民型アソシエーションと地域型コミュニティ組織」p.73〜89、第5章4節「地域福祉サービスの経営」p.139〜144、終章「地域福祉の新たな地平」p.297〜311、(共編著)『地域福祉の理論と方法』(第2版)ミネルヴァ書房、
・原稿提出: 第9章「個別福祉計画の種類と特徴」、「あとがき」、(共編著)『福祉行財政と福祉計画』ミネルヴァ書房
・原稿提出:巻頭言「希望のある明日を築くスタートライン」、第11章「安定成長期・福祉改革期のキリスト教社会福祉」(高山直樹氏と共著)、第13章「日本におけるキリスト教社会福祉関係団体の歩み」(谷川修氏、山本誠氏と共著)、日本キリスト教社会福祉学会編『日本キリスト教社会福祉史』ミネルヴァ書房、
・原稿提出:「社会福祉教育団体と専門職養成」「日本学術会議等の資格制度の提言」、(共編著)『社会福祉事典』丸善
10.講演・新聞記事・講演記録等
・2013年4月12日『山梨新報』「明日の社会を築く〜地域の絆をつくるボランティア活動」(甲府市講演会)
・2013年5月唐津放送<特集番組>「みんなが地域の主役〜今、私たちができるボランティアとは?」(唐津市ボランティアの集い「講演」)
・2013年6月第54回キリスト教社会福祉学会全国大会シンポジウム「今日におけるキリスト教社会福祉の役割―希望の光が見える新たな社会づくり(2)―」シンポジスト 幸田和生氏(日本カトリック司教協議会・カリタスジャパン担当司教)・藤野興一氏(社会福祉法人鳥取こども学園 常務理事・園長、日本キリスト教児童福祉連盟 理事長)・司会市川一宏
・2013年7月(東京・福岡会場)社会福祉協議会活動全国会議「てい談 生活支援活動を通じて社会福祉協議会がめざすもの」『ノーマ』8月号・9月号、全社協地域福祉部
・2013年7月社協会長会議・事務局長会議「地域の生活支援と社協活動を考える」『ひょうごの福祉 NOW』9月号
・2013年10月(千葉)全国民生委員児童委員全国大会報告書(特別集会)「東日本大震災被災地における民生委員・児童委員活動〜被災地と全国との絆による被災地支援の強化に向けて〜」
・2013年11月(高知)第22回全国ボランティアフェスティバル報告書「ふれあい・いきいきサロン全国研究交流会基調講演・コーディネーター<明日へ繋げよう地域の絆〜輪・和・話>」
・2014年2月2日『三陸河北新報社』「支え合って地域再生 石巻で福祉フォーラム 具体的活動へヒント学ぶ」
聖望学園入学式挨拶、長野県民生委員・児童委員研修会、長野県介護支援専門員更新研修・中堅研修、特別区職員研修「高齢者福祉」、長野県地域福祉コーディネーター研修、家裁調査官授業「社会福祉」、全国市町村社会福祉協議会管理職研修基調講演、神奈川県地域福祉コーディネーター研修講義、鹿児島市民生児童委員大会講演、賛育会全体研修会講演、中四国都市社協研修会講演・シンポジウム、永信会創立40周年記念会講演、諏訪ブロック社協研修会講演、石川県社協トップセミナー講演、石川県社会福祉大会講演、民生委員リーダー研修講義、宮城学院大学研修会、自治大学校講義「地域福祉」、島根県地域福祉学会プレ大会講演、熊本県地域福祉フォーラム、広島市地区社協リーダー研修、浜松市社協、静岡市社協、島根県民生児童委員会長研修、浦和ルーテル学院コメスメント、栄光教会、掛川・菊川教会、挙母教会、牛久教会
2010年度は、以下の県で講演をさせていただきました。その場が被災地になったことに、深い悲しみを覚えます。私は、ご指導いただいた多くの方々の思いを心に灯し、今、命ある被災地の方々と末永く、一緒に歩むことであると思っています。
青森県三戸郡60周年記念大会「これからの地域福祉と社会福祉協議会の使命」、宮城県市町村社協会長・事務局長会議「市町村社会福祉協議会に求められる地域福祉活動について」、福島県生涯研修講師スキルアップ研修~福祉を取り巻く環境と福祉人材養成の意義~」、山形県市町村社協トップセミナー「市町村社会福祉協議会に求められる地域福祉活動について」、茨城県社会福祉法人指導的職員研修「福祉を担う人材とは?〜専門性・人材確保・育成等を考える〜」
11.今までの共編著
『社会福祉と聖書』(共編著)リトン、『社会福祉論』(共著)ミネルヴァ書房、『老人福祉論』(共著)ミネルヴァ書房、『地域福祉論』(共編著)ミネルヴァ書房、『社会福祉協議会論』(共編著)全国社会福祉協議会、『高齢者施設の個室ケアマニュアル』(共編著)中央法規、『地域福祉論』(共著)中央法規、『ボランティアコーディネータースキルアップシリーズ』(監修・共著)全国社会福祉協議会、『生きるー生きる<今>を支える医療と福祉』(共編著)人間と歴史社、るうてる法人会連合『共拓型社会の創造をめざしてー未来を愛する 希望を生きるー』人間と歴史社、『キリストの愛を伝え、共に成長するー未来を愛する 希望を生きるー』(共編著)リトン、『はじめて地域福祉の担当になった方のために』(共著)神奈川県
礼拝堂の正面
2013年度卒業式 3月7日
花は咲いています
本年の2月1日、宮城県石巻市で開かれた地域福祉フォーラムの基調講演とシンポジウムの司会のご依頼を受けました。テーマは、「震災からの地域の再生コミュニティのあり方を考える」でした。まもなく、東日本大震災から3年目を迎えようとする今、被災地の復興と地域の再生をめぐる本格的な議論が始まっています。
私は、講演の内容を固めるに際して、本当に悩みました。なぜなら、何度も石巻市を訪問し、被害の大きさを知っていたからです。また復興が遅れている現実を見ていたからです。大切な家族や友人、家や財産、思い出の品を、津波で根こそぎ失った方がたくさんおられるからです。ですから、私がどのような励ましの言葉を言っても無意味ではないか。いや、返って失礼ではないかと思い、悩み続けました。
ルーテル教会救援「るうてるとなりびと」が活動していた地域に大川小学校がありました。そこには、何10人もの子どもたちが通っていました。しかし、2011年3月11日、海から来た津波と、川を上って来て、橋にからまった木などの障害物が堰となり、ぶつかって戻ってきた津波に襲われ、たくさんの子どもたちと教師が亡くなりました。2年後の2012年2月に行きました時には、川をせき止め、まだ見つからない子どもを探していました。その夏には、もう使われていない小学校の正面にある記念碑に、いっぱいのひまわりが飾られていました。その意味を、『ひまわりのおか』(文:ひまわりをうえた八人のお母さんと葉方丹 絵:松成真理子、岩崎書店)という本で知りました。その詩の一節を紹介します。
「ひとつぶの小さな種が、 千つぶもの種になりました。
そのひとつぶひとつぶが、 ひとりひとりの子どもたちの、思い出のように思えました。また 夏が来たら 会おうね。ずっとずっと いっしょだよ。」
悲しみは、消えません。これからもその事実は変わらない。しかし、ひまわりの花言葉は、「あなたを思い続けます」です。大切なあなたを思い続けていく。思い出を心に留め、生きていこうとする人たちがおられることを私は忘れることができません。
現地は、これからもたくさんの課題に取り組まなければなりません。震災で家を失い、避難所で生活をし、仮設住宅に移り、そこも離れて復興住宅でこれからの生活を築こうとする人々がおられる。しかし、そのような状況にあっても、明日を切り開こうとする、たくさんの希望の花が咲いてきています。厳しい時に、困難な場所で咲く花だからこそ、多くの人の心に励ましを与え、明日への希望を生み出すと思っています。
全国で歌われている復興支援ソングをご存知でしょう。「花は咲くプロジェクト」として、歌われている歌があります。その歌の一節を紹介します。
夜空の 向こうの 朝の気配に
わたしは なつかしい あの日々を 思い出す
傷ついて 傷つけて 報われず 泣いたりして
今はただ 愛おしい あの人を 思い出す
誰かの想いが見える 誰かと結ばれてる
誰かの未来が見える 悲しみの向こう側に
花は 花は 花は咲く いつか生まれる君に
花は 花は 花は咲く いつか恋する君のために
聖句に戻ります。(マタイ6:27)
「野の花がどのように育つのか、注意して見なさい。働きもせず、紡ぎもしない。しかし、言っておく。栄華を極めたソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾っていなかった。今日は生えていて、明日は炉に投げ込まれる野の草でさえ、神はこのように装ってくださる。まして、あなたがたにはなおさらのことではないか」と書かれています。
ソロモンは、古代イスラエルの第3代の王で40年近く王として君臨し、イスラエルの最盛期を築いた人です。そのような強力な権力をもった人でも「野の花」にはかなわないと書かれている。
また、聖書に書かれている「野の花」は何か。『新聖書植物図鑑』(廣部千恵子著、教文館)によると、一般的には、アネモネであるとされています。アネモネは、春一番に咲く花であり、花は朝開き、夕方近くになると閉じてしまう。6枚の花びらがあり、花の直系は4〜8㎝で、花びらの基は黒っぽく、周りは白い花です。その花自体、薬になり、たくさんの効用があるようです。でも、この花は、イスラエルの春一番に咲く、普通の花です。
イエスは、この「野の花」を含め7つの譬えを語られ、「思いわずらうな」といことを私たちに伝えて続けておられます。(ウイリアム・バークレー著、松村あき子訳『マタイ福音書上』ヨルダン社、1968.p.277)なぜ、思い悩むのかと。神がこれほどまでに愛されているのに、何を戸惑っているのかと。
確かに、大学には、たくさんの花が咲いていました。昨年、私は、療養中の大切な卒業生に、大学に咲く花の写真を、毎日送り続けました。東門のそばに咲く卒業生から送られた「カンヒザクラ」、「シャガ」、紫色のちいさなすずのような花は「ムスカリ」、前田ゲートのところに咲く「スズランスイセン」、嵐のようにさきほこる「ユキヤナギ」、「昼顔」「ヒペリカムヒドコート」、「バラ」「紫陽花」「ツツジ」「ダッチアイリス」、「釣り鐘スイセン」、「シラン」等々。私は、花の名前を知りませんので、神学校の新校長になられる石居先生にお聞きし、名前がわかりました。
大学の敷地のいたる所に咲くそれぞれの花には個性があり、美しかった。しかし、わたし自身が、咲いているたくさんの花に気がつかなかった。その美しさに気がつかないで、日々を過ごしていた。治療に専念している彼女をどうしても励ましたくて、彼女が過ごした大学に咲く花を写真に撮って送ろうとした時に、こんなにたくさんの花が咲いていることに気がついたのでした。
本当に大切なものは。私たちをいつもそばで見守ってくれた花ではないでしょうか。私たちには、気がついていないが、私たちの周りには、たくさんの思いやりがある。悲しいことは、辛いことは心の中に残る。そして、怒りは、心を揺らします。しかし、大切なことは、また希望の光は、特別なものではない。普段何気なく歩いているその道に花が咲いていおり、その花に見守られ、私たちの今がある。
本当に大切なものは、私たちをいつもそばで見守っていてくれた花。私たちの思いを支え続けてくれた花。今日は、君たちをここまで支えてくださった花に、お礼を言おう。私も、今まで私を支え、今日の卒業式に参列している一輪の大切な花にお礼を言いたい。
今日、卒業する学生諸君に申し上げたい。あなたたちは、私たち教職員にたくさんの思い出をくれました。一生懸命授業を聞き、予習と復習を欠かさず、ノートにまとめていた学生。自分を追い求め、心が揺れていた学生。一人ひとりとの出会いが、私にとって、思い出です。共に学んだ者として、苦しみのただ中にある人に、希望と愛の花を届けてほしい。
私も、学長という立場から、実践、教育、研究のフィールドに重点を移します。毎日のように人身事故が起こる日本社会は本当におかしい。いても立ってもいられない。社会で、君たちと出会うこともあるだろう。自分が目指す明日を大切に、希望を心に灯し、困難にある人々にルーテルの花を届けてほしい。そして、届ける花がなくなった時には、大学での生活を思い出してほしい。大学には、いつも、たくさんの花が咲いています。
卒業、おめでとう。これからもよろしく。
大学に咲いていた花
投稿日 14年03月08日[土] 10:27 PM | カテゴリー: 大学関連
全国にいる友人から、桜の写真を届けてもらい、卒業生に送っていました。今から見ても、きれいな桜です。
今は、本当に寒い日が続きます。でも、桜は、花を咲かせるために、今も力を蓄えています。桜について、少し述べた入学式のメッセージを掲載します。
2013年度入学式
テーマ「新しい出発のための5つのC」
聖書:「新しいぶどう酒を古い革袋に入れる者はいない。そんなことをすれば、革袋は破れ、ぶどう酒は流れ出て、革袋もだめになる。新しいぶどう酒は、新しい革袋に入れるものだ。そうすれば、両方とも長もちする。」(マタイ福音書第9章第17節)
新入生の皆さん、入学おめでとう。ご出席のご家族の皆さま、関係者の皆さま、おめでとうございます。今日は、新たな学びのスタート台に立つ新入生諸君へ期待を込めて、お話をさせて頂きます。
1.「新しいぶどう酒」と「新しい革袋」
今日の聖句には、「新しいぶどう酒を古い革袋に入れる者はいない。そんなことをすれば、革袋は破れ、ぶどう酒は流れ出て、革袋もだめになる。新しいぶどう酒は、新しい革袋に入れるものだ。」と書かれています。当時は、ぶどう酒をビンではなく、革袋に入れて貯蔵していました。新しいぶどう酒はまだ発酵が終わっていないので、膨張します。古い革袋は固くなっているので破れてしまいますが、新しい革袋は弾力性があるので膨張にもちこたえることができるのです。
私は、新しいぶどう酒とは、私たち一人ひとりがもつ夢・希望だと思います。お金をなくすと生活の危機、名誉をなくすと心の危機、夢・希望をなくすと存在の危機をもたらします。夢は、生きていくために大切な宝であると思っています。
2.夢・希望
ある大企業が、2012年12月、20代~50代と2013年新成人の男女各100人、合計1,000人に対して行った「日本人の夢調査」では、日本人の約76%が現在叶えたい夢があると答えました。また新成人の約85%が夢を持っており、どの世代よりも夢の保持率が高いことがわかりました。
しかし、夢を持っていたことはあるが、現在は夢が無いと答えた人の約78%は、夢が叶ったからではなく、諦めたからと回答しました。もっとも多かった回答者が24歳であったことを考えますと、夢を持って社会人になり、社会の荒波にもまれることで夢を諦めてしまう人が多いと言えるかもしれません。
夢は描くだけでなく、実現するものです。だからこそ、自分にとってふさわしいぶどう酒をもち、それを現実のものとするために、さらにそれぞれの革袋を、学生時代につくっていただきたい。確かに、挫折はあります。しかし、挫折の意味を理解し、実現のためにたえず自らを成長させていってほしい。
厳しい生活の中で、夢を持とうとする子どもたちのことをお話しします。県民の約10%が自宅から避難している現実にあっても、子どもたちは自分の将来を見つめています。桃色の傘をさしてNHKの『八重の桜』に登場している福島県内370名の小学生高学年一人ひとりは、10年後の自分自身に宛ててスケッチブックに書いた短い手紙を持っています。
「10年後の私は、人を助ける仕事をしていますか?」や「よみがえった福島の自然のなかで精一杯生きていますか?」といった内容のメッセージだったそうです。彼らは、困難に直面しつつも、自らの夢の実現に向けて歩んでいきます。私は、彼らが夢を叶えることができるよう、一緒に歩んでいきたいと思っています。
3.アジアの子どもたちが夢を描き、夢を実現する支援(チャイルド・ファンド・ジャパン)
海外の子どもたちが夢を実現できるように支援している活動を紹介します。チャイルド・ファンド・ジャパンという日本の民間非営利団体は、アジアの貧困状態にある子どもたちが幸せに、そして責任ある大人に成長することを願って活動しています。
そもそも、同団体の起源は、第二次世界大戦後、アメリカの民間団体、CCF (Christian Children’s Fund:キリスト教児童基金)による日本の戦災孤児への支援に始まります。アメリカ、カナダ等の多くの方々からの資金援助が届けられ、22年後の1974年のCCFの支援終結までに、延べ86,000名の子どもが支援を受けました。
その支援は、翌年の1975年より、基督教児童福祉会(CCWA)国際精神里親運動部、そして現在のチャイルド・ファンド・ジャパンに受け継がれています。フィリピン、スリランカ、ネパールの子どもたちのためにスポンサー(里親)を募り、資金の提供を受け、今では、5,000名の子どもたちがこの支援により学校に通っています。目標は、子どもたちが学び、自分の夢と希望をもち、それぞれがもっている可能性を生かし成長し、それぞれの夢を実現すること。
今、支援を受けていた子どもたちが大人になって、貧しい子どもたちを支援していく。このような絆が生まれています。チャイルド・ファンド・ジャパンの創立時、また現在の組織において多くのルーテル学院の教員、卒業生等が役割を担っていることは、私たちの誇りです。諸君にも、人のために働くことができる人材に成長して頂きた。
さて、この聖句について、神学者のバークレー(バークレー著・松村あき子訳『マタイ福音書上』ヨルダン社)は、このように言います。「われわれの心は、新しい思想を受け入れるだけの弾力性がなければならない」と。「革袋」とは、自分自身そのものなのであり、問われているのは、私たち自身なのです。そのため、自らが、広さ、強さ、弾力性をもった革袋に育つことが必要です。
そのために、私は、学院だよりに書かれている5つのCを申し上げます。
4.大切な5つのC
①Compassion[共感]
人の悲しみがわかること、そして共に悲しむことです。また、他者の喜びを率直に喜ぶこと。それは大切な人間力です。
②Capacity building[能力育成]
自分の持ち味、弱さ、強みを知ること。弱さを少しずつ改善する謙虚さと、強みを活かす勇気を持って頂きたい。
③Collaboration[連帯]
様々な出会いを通して、人、文化、経験の違いを学び、排除しあうのではなく、互いに助け合い、直面する課題に取り組んでいていくように努力してほしい。
④Challenge[挑戦]
将来の目標を見出し、それに挑戦していくことは簡単なことではありません。自分にふさわしい目標を見つけ、一歩一歩、たゆまず、諦めず、目標に向かって歩んでいくしぶとさを持って頂きたい。
この4つのCを横軸にして、中心に⑤Christ[キリストの愛]という縦軸を置く。キリストは、苦しむ人間の姿に駆け寄り、寄り添い、その痛みを取り去ろうとされました。人間に対する深い愛情があったからです。そこを縦軸として頂きたい。
5.桜の木
私は、入学式の日が桜の満開の時に重なるといいと思ってきました。しかし、2日前の日曜日の早朝、用事で大学に来て桜を見上げた時から、その考えは、誤りであったと思っています。土曜日に仕事で鎌倉市に行った時、ほとんどの桜が散っていましたが、大学では残っていたのでした。待っていてくれたのです。
この礼拝堂を出て、ルーテル学院の建物の周りの桜を見て下さい。昨年の秋に、葉がすべて落ちた枝から、たくさんの若葉が出ています。花の間から、若葉が出て来ているのです。葉が茂り、厳しい夏に太陽の光を受け、養分を蓄え、さらに秋には散り、冬の寒さに耐え、春に花を咲かせる。これが桜の姿です。
また、満開の桜は一瞬ですが、今でもたくさんの桜の花が散らずに、皆さんを心から迎え、祝ってくれています。限られた時に咲き誇る、咲きそろう美しさより、一輪一輪の花にそれぞれの思いやりを感じます。
諸君には、この桜のように、新たな夢をもち、それを実現できる力を身につけて頂きたい。新しいぶどう酒を新しい革袋に入れる学びを、ルーテル学院でして頂きたい。その学びと成長の時に、私たち教職員も、一緒にいたいと思います。
皆さんのルーテル学院での学生生活が、実り豊かな時であるますように、切に祈り、皆さんへの言葉とします。
井の頭公園の桜 花びらの舞う鶴岡八幡宮
赤と桃色、白の花が踊る桜 鎌倉のダンカズラ
旧須木村より宮崎市内に向かう山道より
仙台榴ケ岡公園
富士山と桜
石巻市の日向山の桜
2011年3月11日に被災した地域
岩手県盛岡市石割れ桜
旭川の桜
札幌の桜
山形県上山市の桜
岩手県小岩井農場の桜
中庭の桜
東門の桜
ただ、ひたすら、大切な教え子の回復を祈って送り続けた桜が、こんなにたくさんあったこと。そして、全国の友人たちが、こんなにたくさんの写真を送っていたことを確認し、私の心は感謝の気持ちで一杯になりました。
投稿日 14年01月14日[火] 10:47 PM | カテゴリー: 大学関連